やす君のひとり言

やす君の情景

~大分市竹中やすらぎ霊園~

霊園風景 その80  「‥東屋から見る さつきの色」

 

   「‥東屋から見る さつきの色」

 

    霊園内には 7ケ所 東屋があります

    駐車場脇であったり 観音様の前であったり 一番高い樹木墓の傍であったり

    小鳥の声がひときわ 美しく聞こえて できれば 少し霧で 霞んでいる

    そんな 晴れた日の朝に 樹木墓傍の東屋に 腰を下ろします

 

    眼下から 眼前に広がる 光景は 見慣れたはずなのに 真新しいカーテン越しに

    見るような 清新さを 与えてくれて 心のわだかまりや 体の疲れが 

    どこかに 消えていきそうで そして ちょっとだけ 得をしたような 

    気がつけば ほくそ笑んでいる 自分がいて

    

    風の吐息が 透き通った歌のように 聞こえる時は 身も心も 満たされている時で

    風の吐息が 息づまった歌のように 聞こえる時は 身か心か 両方が萎れている時で

    元気のない そんな時は ここに座り 少しの間 何も考えずに 眼をつむります

    そして おもむろに 開きながら 朝の光景を 眼の中に 織り込んでいくのですが

    肝心なのは 一気に 開けるのではなく 少し 躊躇しているかのような 心持ちで

    ゆっくり ゆっくり 開けて 眼前の光景を 焼き付けていくこと です

 

    日毎に 淡い緑色の世界に 染まっていく さつきの 光景

    同じように見えても 木々によって 場所によって 微妙に色の違いがあります

    それぞれの 特徴があって 自然の息吹を感じさせてくれる 貴重なひとときです 

    人も 自然も 生きている そして わたしも生きている 

    春夏秋冬 り返していく 歳月の流れ

    わずかな 景色の変化にも 限りない うれしさや喜びを 見出すときがあります

    それも 生きていることの 証 なのかも知れません

           やすらぎ霊園には 今日も 青空が 広がっています             

      

 

             【晴れた朝 樹木墓の東屋から見える さつき色】f:id:yasuragi-reien:20200511132639j:plain

 

 

    

  

f:id:yasuragi-reien:20170207092834j:plain 「衣更え 白きシャツのみ はおりたり」 

  

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回顧録 no.80 「‥夢の風景 ~Mさん と ホタル」

 

   「‥Mさん と ホタル」

 

    20の頃 住んでいた町には 澄んだ水を湛えた川が 蛇行しながら 横断しており 

    車で20~30分ほど走った その川の上流に 石灰石の白と清水が 織りなす 

    美しい渓谷があって 夏には 多くの家族の にぎわいがあった

    

    渓谷のすぐ先 古い石橋が架かる そのたもとに 桜の木が迎える 

    酒屋さんがあり 気さくでやさしい 高齢の夫婦が 営んでいた

    時折 仕事にかこつけては 昼食時に 弁当持参で訪れ 丸いメガネ越しの 

    Mさんの 話を聞くのが 好きだった 

    同い年 大学生の息子がいることもあって とても可愛がってくれ 歴史の先生らしく

    話題は豊富で いつも 新しい発見で驚き  時を忘れて  傍にお母さんの苦笑い

 

    やがて その町を離れ 30に近い 夏に入る頃  思い立って 訪れた

    以前より 少し寂れた庭には 一台の車が居座り その中は 人が寛げるように

    改造され ソファや小さな机や椅子 きちんと整理された本などが 窓越しに見える

    10年近い歳月は お母さんの腰を 少し曲がらせ メガネが必要になっていた

    そして‥‥ 

    そこに Mさんの 気配は なかった 

 

    認知症が 少しずつ進行し やがて ひとりで家にいることが できないようになり

    お母さんが 外出するときは Mさんを 庭の車に乗せ 鍵を掛けていた そうな

    そのための 車だった

    だが 体は 次第に弱くなっていき 他の病気を 抱えていたこともあって 

    入院して間もなく 眠るように 彼岸にわたり 今年 初盆を迎えるという

 

    壇の前で微笑む Mさんは あの頃と変わらぬ やさしさを湛え

    お母さんが見せてくれた写真 玄関前で 僕と笑っている メガネの似合うMさん

    涙で 霞んだその先に 石橋が見えて いつの夏だったか そこで一緒に

    ホタルを眺めた 記憶が 蘇ってくる

    欄干に腰を置き タバコをくゆらせ 飛び交う黄色い光を 黙って追っていた Mさん

    

    夕やみ迫る頃 同じ場所に 腰を下ろし ホタルを待つ

    車の中から Mさんが見た ホタルは 何色に見えたのだろう と 思いながら

    そして‥‥

    もしかしたら あの中に Mさんホタルが いるかも知れない と 思いながら

    「父さん 来たよ」 と‥ 

    ひときわ輝く ホタルに 挨拶する   

    

  

                

             

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霊園風景 その79  「‥人影の消えた光景」

 

 「‥人影の消えた光景」

 

       卯月から皐月へと つなぐとき 今日も 静かな朝を 迎えました 

   いつもなら 新緑の中で 多くのご家族が訪れ 霊園内の お墓たちを

   色とりどりの供花が 優しく 着飾っている 頃‥‥  なのですが

   今年は 風と光と鳥の声 だけが 眼前に 現れては 消えていく 淋しい光景です

 

  桜は 山桜が咲き 陽光桜が輝き 染井吉野が彩り 八重桜が終わりを告げる

  繰り返されていく 春の饗宴 

  その美しさは 愛でる人がいるからこそ 映えるものなのでしょうが

  今年の桜花は とても虚ろで 色褪せたかのように 寂しく 映ります

  自然の創り出す 美が 壮大であればあるほど 人々の感動も 大きく 深く

  いつまでも 心の中に 宿っていて それが生きる勇気や 励みになることも

  

  日本人の心に宿る桜花は 特別なものがあります

  誰もが 自分だけのために 咲いてくれる 桜花があり

     今頃 訪れるのを 待ってはいないだろうか

  そんな想いを抱いて かの地の桜花に 逢いに行きます 

  見ることのできない 淋しさ   見てもらえないことの 寂しさ

  今年の春は 何か大切なものが すっぽりと 抜け落ちたまま 過ぎていくような

  後ろ髪を引かれながら‥ 

  待つことなく 季節は 田植えの五月に 向かいます 

 

                                             【八重桜の残る 新緑の霊園風景】

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f:id:yasuragi-reien:20170207092834j:plain 「見る人も 無き桜花 墓に舞い」

 

 

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霊園からのお知らせ  「‥5月連休中も営業しています」

        「‥5月連休中も営業しています」

        ~・~・毎日9時~17時まで・~・~

  

  新型コロナウイルスの感染拡大や伴う自粛要請などにより、県民も皆さまの不自由な生

  活を余儀なくされておられることと思います。

  やすらぎ霊園でも、例年に比べますとお参りする方々も少なくなっており、お墓たちもなぜ 

  か、寂しそうに見えています。

 

  それでも、緑に包まれたやすらぎ霊園は、3密には無縁の世界で、清々しい新緑が映えて

  鳥たちのさえずりが 爽やかな風に乗っていきます。

  これからの連休も毎日、職員が常駐しておりますので、どうぞお気軽にお越しください。

  各種特典などを用意して、皆さま方のお越しをお待ちしています。 

 

 

 ~・~・「5月連休特典」 お墓の特別提供 ・~・~

  5月2日から6日までの5日間、お墓の特別提供を行います。

  すぐに納骨できる「展示墓」や在庫分などを通常よりお安く販売いたします。

  また、各種サービスをお付けした特価販売のお墓も準備いたしました。

  この機会にぜひ、やすらぎ霊園で検討ください。

  役職員一同、心よりお待ちいたしております。

 

 来園される方へのお願い *                                                                      

  新型コロナウイルス感染拡大防止のため来園される方々へのお願いです

  皆さまのご協力をよろしくお願いいたします。

   ①  事務所にお寄りの際は、マスク着用をお願いします。

   ② 亊務所入口に除菌スプレ-を設置していますので、ご利用ください。

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回顧録 no.79 「‥夢の風景 ~幸せの大きさ」

 

 「~幸せの大きさ」

 

       右往左往しながら 生きてきた 歳月 

   あの時 こうしていたら  あの時 ああしていたら 

   人生 どうなっていたのだろう と 

   決して 戻らないと わかっていても 

   何年過ぎていても ふとした時に 振り返ることがある

 

   もし あの道を歩いて行ったなら 今  何処で何をしているのだろうか

   もし あの道を歩いて行ったなら 今  周りには誰がいてくれるのだろうか

   もし あの道を歩いて行ったなら 今  生き永らえているのだろうか

 

   幾つも 選択肢があって 迷いながらも この道を選び 歩き通してきた

        敢えて 飛び込んだ道もあれば  半ば 逃げ込んだような道も あった

   どの道を選んでも 喜びや 悲しみや 苦しみや 辛さが ついてきて 

   重なり合っては 流れ去り それらを繰り返しながら 命が続いていく

   喜びであふれていても 悲しみであふれていても それこそが 生きている証

   喜びも悲しみも 永遠に続くことはなく 必ず 繰り返していくもの

   だからこそ 人生で 織り上げる模様は どこまでも 広くて 深い  

   

   そうして 生きてきた 人の生 人生    

   人と人とが 交りあっていくからこその 人生  

   長い年月を経て 眼前の山々を 見上げ 教えを乞う 

      

   山々は いう‥‥

   「幸せか」と 問われたら 「幸せ」 と 答えよう

   「どのくらい幸せか」と 問われたら 「大空ほど幸せ」 と 答えよう

   「なぜ大空なのか」と 問われたら 「全てを包み込んでいるから」 と 答えよう

   「何を包み込んでいるのか」と 問われたら 「笑顔と涙のぜんぶ」 と 答えよう

 

    して‥‥

   「幸せの大きさは」と 問われたら  「笑顔と涙の数を足したもの」 と 答えてあげよう

   生きてる限り 誰にでも 訪れてくる いくつもの出来事     

   大きな喜びや 小さな喜びの 笑顔  大きな悲しみや 小さな悲しみの 涙

   全部足した涙が 幸せだとしたら 幸せは 長く生きるほど 大きくなる 

   きっと 彼岸へ渡るとき 心は あの大空のように 晴れ晴れとなって 

   それが 本当の幸せなのだ と 答えてあげよう   

    

   ふるさとの 青い春の山々が そう 教えてくれる

   そして 「生き続けよ」 という  叱咤か 励ましか 声が 届いてくる

   さあ! 明日は笑おうか? それとも泣こうか? 

   それで 幸せが増えてくるのなら‥‥ 

   

   

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霊園風景その78 「‥桜散り 緑映え」

 「‥桜散り 緑映え」

  

  やすらぎ霊園のあちらこちらで 春真っ盛りを告げてくれた 山桜が散っていき

  轍を除けた道路に 花弁が 敷き詰められていきます

  僅かに残る花びらを 押しのけるかのように 真新しく 柔らかな 新緑の芽が  

  勢いよく 伸びてきました

     いつの間にか 主役の交代です

 

  この春の桜もまた 美しい ひとときを 届けてくれました

  変わりゆく 季節の一コマを眺めていると 穏やかな 心もちを 抱かせてくれます

  おそらく 千年以上の昔から 人々は 同じように 名残惜しんだに 違いありません

  春風に乗って 散り散りと なっていく 花びらに 行く世の はかなさ 侘しさなどを

  伝えたのではないでしょうか

  時が移り 時代が変わりゆこうとも 永遠に 桜花への想いは 継がれていくのでしょう

 

  若葉の美しさも 決して 負けてはいません

  艶やかな花々が 空の彼方に 舞い散る頃 一斉に 若々しい芽が 浅黄色に 輝き始め

  光とともに 緑濃く 染まっていきます

  花々が 春を告げる使者としたら 緑は 春にいざなう使者でしょうか

  真上の 葉裏を見上げれば 青空の前で 織り成す 光と影の なんと 美しいことか

  この葉たちは これから夏に向けて 大空をめざし 広がり続けて

  そして 秋には鮮やかに 葉色を変え やがて地表に舞い降りてくる

  緑葉に 四季のうつろいを 馳せられる それだけでも 生きていることは 幸せ

  そう 思うことができるのも また幸せ  幸せの繰り返しは さらに幸せ なのです

 

  卯月から皐月へ 

  花々と木々の緑が 最も華やいで 競い合うかのように 背伸びする季節

  人々の暮らしも 一気に 活力溢れ 元気な声が飛び交う 飛躍の季節

  自然と人が 調和してこその 社会の営み 輪の広がり なのですが

  年明けから 試練ともいえる 日々が 続き 暮らしも 厳しさが増して 

  明るい季節とは裏腹に 大きな不安に さいなまされています

  それでも  長い歴史において 先人たちは 知恵と力を合わせ 幾多もの困難を

  乗り越えて 今に繋いでくれました

  これから50年後 さらに100年後  子孫たちが 

  もっと 素晴らしい環境の中で  活き活きと 生きている‥ ように

  そのため 今 できることを 粛々と 実行していきましょう 

  そう 願う 春の一日です

   

                  【浅黄色に染まる若葉たち】

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f:id:yasuragi-reien:20170207092834j:plain  「晩霜に 鳴くこともなし 青蛙」    

 

 

 

 

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回顧録 no.78  「‥夢の風景 ~この世とあの世」

 「~この世とあの世」

 

     緩やかな坂道が続き 陽炎のように揺れた 遥かな先に 海が見える

    春から夏に移る 晴れた 風のある 昼下がり  

   家庭訪問を終えて その風に 押されるかのように 坂道を下っていく

   人影はまばらで そして なぜだか 誰もが 海をめざしている

 

   少しずつ 中心部が近づいてくる 

   道の右側は 華やかで 人や車が絶えない 木々の緑も 鮮やかに映っている

   道の左側は 人影も少なく 街並みも くすんでおり 立ち並ぶ 古いビルの

   窓は開かれ

   ちぎれて色褪せた カ-テンが 風の中で揺れ動き 木々の緑も 生気なく見

   え隠れする

   空の色も 違って見えていて

   右側の空からは 春名残の光が 町中を キラキラと 輝かせ 

   左側の空からは 薄曇りの ぼんやりした 夕暮れのような 光が届いている

 

   左側の街並みが すぐ下に見渡せる 広場で 足を止めた

   暗い印象だけの光景が 目に焼き付いて なぜだか そこで 躊躇している 

    

   どれほどの時間 そのベンチを 温めていたのだろう

   ふと目を覚ますと 坂道から 笑い声が下りてくる

   振り向けば 懐かしい顔ぶればかり  その先頭は 母だった

   あの最後の夜 着ていた服が 母の笑顔を飾っている

   そして 叔父や 叔母や 祖父母まで 元気に笑い 歩いてくる

   最後に 父がいて あの頃のような 静かな笑顔が ゆったりと 見え隠れ

 

   「元気かい?」

   思わず声をかけると とびっきりの笑顔で 母がうなずく

   父は 黙って 僕の肩を やさしくたたいた

   父と母が 幸せそうに 見合っている 

   「じゃー またね」

   そう言うと 二人は手をつなぎ みんなの後を 追って行く

 

   いつの間にか 左側の空も街も 風景は一変しており

   明るい陽射しの中 あのカーテンたちが 色鮮やかに蘇り  母たちを

   迎え入れるかのように 風景の中で踊り舞い 温かい光が 包み込んでいく 

   

   みんなの後ろ姿が 涙でぼやけた

   父や祖父母たちと 母が笑っていた  

   それだけで 嬉しかった 

   永い間 苦労した分 幸せで いて欲しかった 

   軽やかに跳ねる母と 優しく笑う作業服の父  

   28年ぶりの再会に 初夏の陽と風が 優しく交差する

 

   桜 咲く頃に見た この世と あの世の 幸せな夢‥ 

 

  

   

   

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