やす君のひとり言

やす君の情景

~大分市竹中やすらぎ霊園~

霊園風景 その101 「‥お彼岸の頃」

 「‥お彼岸の頃」

 

   「お彼岸」は 遥か昔 西の彼方に 極楽浄土があると信じられ 

   太陽が真東からのぼり 真西に沈む 春の春分の日 秋の秋分の日に 

   西の太陽を礼拝したのが 始まりと いわれています 

   「お彼岸」は わたしたちが 彼岸へ渡った先祖を敬い 感謝する機会である 

   と 同時に らためて ここに こうして 生きていること 

   生かされていること を 気づかせてくれる機会 でもあります

   「お彼岸」の日に お寺さまや お墓に お参りする ささやかな行為ですが 

   そこには とても大切な意味があると 思います

 

   今年の 春分の日は 3月20日(土)です

   休日としては 明治時代から続いていたそうですが 昭和23年に「春分の日」と

   して制定されました 

   その趣旨は「自然をたたえ 生物をいつくしむ」ことと なっており 

   仏教各派では 春季彼岸会として さまざまな法要儀式が 執り行われます

   

   そして お彼岸につきものが 「ぼたもち」 や 「おはぎ」です

   春は牡丹の咲く季節から「牡丹餅」 秋は萩の花に例えて「おはぎ」

   とも 伝えられますが 作り方や材料は同じ 五穀豊穣や 家族の健康を祈って 

   仏壇や お墓に お供えします

   今年は コロナ禍の中で いつも以上に 祈願する思いが 強いかも知れません

   

   どうぞ お供えした 「牡丹餅」を 味わってみてください

   ここにも 懐かしい日本の味が 詰まっています

   季節ごとに 何かしらの行事があって その都度 美味しいものを 

   いただくことができて ささやかながらでも 満足感を抱かせてくれる 

   そんな想いを 持ち続けることが できていると したら 

   まだまだ この国は 平和であり 幸せなのだと 

   そう 思います‥ 

 

   こうした時代に あっても 日本中の 誰かが 誰かのために

   汗を流し 体を駆使し 物をつくり サービスを提供し いたわりや

   奉仕の心を 尽くしている

   全ては 見えないけれど 聞こえないけれど 間違いなく 多くの人々が

   頑張り続けている そう思えるのです

   巡り来る「春のお彼岸」 ご先祖様を敬い 感謝すると 同時に

   過去と現在 この国を 守り 創り そして 支え続けてくれた 

   人々に 感謝の心を 捧げたいと 願います

 

   開花が早いと 予測されている 今年の桜

   お彼岸頃に 山桜の 美しさを 披露することが出来たら

   嬉しいのですが‥

 

 

        【芝生墓を彩る山桜 樹齢150年ほど とか】

   

   

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f:id:yasuragi-reien:20170207092834j:plain「コロナ禍の 話題ばかりが 彼岸会に」

    

  

 

 

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霊園からのお知らせ ‥「春のお彼岸フェア」開催です

  「春のお彼岸フェア」開催です!!  

  

  やすらぎ霊園では、3月19日(金)21日(日)までの3日間、

  「春のお彼岸フェア」を開催いたします。

  期間中は、墓石指定店力作の展示墓や在庫分を特別価格で提供いたします。  

  また、お好きな区画に建てるお墓も、多数特別価格で準備いたしました。

  どうぞ、この機会にご家族おそろいでやすらぎ霊園にお越しください。

  プレゼントも準備して、職員一同、心よりお待ちしております。

   ※期 間 : 3月19日(土)~21日(日)までの3日間

                        (毎日9時から17時まで営業しています)

  

 【 フェア限定特別販売 】 

 ◇ 展 示 墓  の  大 特 価 

   コンパクトな「なごみ」や「花のお墓」などの展示墓を特別価格で提供します。

   また、各墓石指定店の独自サービスも準備しました。

 在庫分をお買い得価格

   あらかじめ注文したお墓を、お買い得価格で提供します。

 自由墓区画を特別提供

     好きなデザインで建てられる、未建立の自由墓区画を特別価格で提供します。

      ※他にもいろいろと特典を準備しております。 詳しくは電話等でお尋ねください                        

 

 【「ふるさと納骨墓」サービス 】 

 ~・~・大切な方のご遺骨を全国どこからでもお送りいただけます・~・~

 やすらぎ霊園の「ふるさと納骨墓」サービスは、ご両親のご遺骨を手元供養されてい

 る方、ふるさとのお墓の墓終いをお考えの方、霊園まで足を運ぶのが難しい方などの

 ために、ご自宅でお申し込みから納骨まで行うことのできる郵送サービスです。

 ふるさと大分県で供養してあげたいとお考えの方など、ぜひご検討ください。      

 「納骨堂(1年・10年・33年)」と、「永代供養墓」でご利用いただけます。

       詳しくはお電話またはホームページをご覧ください。

     ☎ : 097(598)0100

               ▽HP▽

公益財団法人 やすらぎ霊園 オフィシャルサイト | 「ふるさと納骨墓」サービス

                 「納骨堂」

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              「永代供養墓」 

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プレゼント】

   ◇ アンケートにご協力いただいた方に 「粗品(入浴セット)」をプレゼント!

   ◇ お申込みいただいた方に 「カタログギフト」をプレゼント!

 

 

【その他の催し等】

 1.お寺さま合同供養

   納骨堂・永代供養墓・樹木墓にて、お寺さまに供養いただきます。

   なお、時間は多少前後することがあります。

    *3月21日(日)10時~

 2.お墓のあれこれ相談 (無料)

   期間中、墓石指定店代表が無料でお客さまの相談にお応えします。

    *3月19日(金)~21日(日)までの3日間

 3.供花の販売

   市価よりお安く供花を販売します。なお、数に限りがあります。

    *3月19日(金)~21日(日)までの3日間

 4.蝋燭や線香のサービス (無料)

   期間中、事務所にて蝋燭や線香を無料でサービスいたします。

    *3月19日(金)~21日(日)までの3日間

                                  

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 「春のお彼岸フェア」の詳細は、お電話または

 ホームページをご覧ください。

     ☎ : 097(598)0100

 

 

  皆さまのお越しを心よりお待ちしています。

 

 

 

                                 

          【空から見る 芝生墓(手前)と樹木墓】 

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回顧録の終わりに  「‥夢の風景 100回の記憶から」

「100回の記憶から」

 

 2017年3月 ブログ開設に併せ 「夢の風景」として 回顧録の連載を始めました

 霊園という言葉から 描くのは お墓や墓地 供養など 決して 明るい話ばかり 

 では ありません

 ですが 生まれ来た人 全てが いつかはこの世に 別れを告げる日が来ます

 その日が いつになるのかは 予測できませんが 心残りの ないように 

 誰もの心にある 幼き頃から 今日までの 出会いと 別れ 

 思い出す度に 懐かしくも 泣き笑いしたくなる 過ぎ去った日々

 そうした いくつもの記憶を 文字にすることができたら

 少しでも 心の準備が できるかも 知れない

 それが 回顧録の連載に至った 理由です

 

 フィクションではなく 事実を 思い起こしてみました

 幼いころの記憶をたどり 心に残る人との 出会いや別れなどから

 生きてきたことの 幸せや苦しさ 辛さ そして 今 生きていることへの 感謝  

 積み重ねていく時間の中で ふと気づかされる 

 短くなっていく 此岸  近づいてくる 彼岸  

 思いつくままに そして かすかな記憶を頼りに 過去を 遡上させ

  夢で逢う父や妻や 友などのことも 風景として 文字に記録してきました

  4年が過ぎて そのわずかな 時の中にも 母や叔母や 先輩や友との

 別れがあり 見える景色も 少しずつ 変わってきました 

 

 月日を重ね 出来事を経て 記憶を呼び起こしたら 心のざわつきも 

 なぜか 少なくなってきたようで

 青空を渡る 雲と 風に運ばれてくる 香り 

 鮮やかに映る 緑葉や紅葉 和みを贈る いくつもの花々

 遥か昔から 変わらずに 息づいてきた 自然を 愛おしみ 

 欲を出さず 愚痴を言わず 家族や友の幸せを祈り  

 今 ここにいることを 感謝して 一日を終えることができる

 そんな どこにでもある 当たり前のことが 日常になってきますと

 文字や 文章が 一人歩きしして それまでの記録が 消されてしまいそうで

 そろそろ 何かを 切り離さなければならない時に 来たのかもしれません

 

 そうした思いもあり 今回  100回の掲載を区切りとして  

 「夢の風景」記録を 閉じさせていただくことにしました

 4年間にわたって つたない文書を 読んでいただいた 皆さまに 

 心から お礼申し上げます

 記録の中の 一文が 少しでも 皆さまの記憶や思い出に つながり 

 琴線に触れたり ふとした気づきなどに ご縁があったとしたら 

 幸せに思います‥

 ありがとうございました 

                                 (完)

                                    

 

 

        【2月の青空 瀬の本高原から望む 阿蘇山の雄姿】

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霊園風景 その100 「‥不易と流行」

  「‥不易と流行」

 

        30年ほど前になりますが ある研修会の講師に 念願だった 

  作家の 山本七平さんを 招く機会を得ました

  演題は 記憶にありませんが 講演の中で 渋沢栄一と 「不易と流行」の

  話があったことを ふと思い出したのです

  渋沢栄一を TV大河ドラマが取り上げる そんな話題を 耳にしたことが

  きっかけなのですが 

  

  講演後も あの「不易と流行」の言葉だけが ずっと心の中で 生きており

  課題や困難に 出逢っても 絶対に 一貫して 変えない「不易」 と

  時々の状況や 時代感覚の中で いかようにも 変えていく「流行」 と

  このふたつは 言葉の師匠 そして 文字の先生でした

 

       調べてみますと この「不易と流行」

  もともとは 俳人 松尾芭蕉の お弟子さんが 師匠から聞いたことや

  教わったことなどをまとめた「去来抄」に 出てくる言葉だそうです

  「不易を知らざれば 基立ちがたく  流行を知らざれば 風新たならず」

  「変えないことを知らなければ 基礎は出来上がらない

   変えることを知らなければ 新しい風は吹いてこない」

   一読しますと 正反対のことのように読めますが その根本は一緒で

  「絶対に揺るがないほどに基礎を固めて 時代や人々の変化に沿って

   新しい風を送り込んでいこう」と 受け止めることができるのです

 

 わが国には 創立100年以上の企業が 3万3千社以上存在し 

 世界に冠たる老舗王国ですが 1世紀以上 絶対に変えず 頑なに守り続けてきた 

 ここにこそ 「不易」が 存在していると 言えるのではないでしょうか

 それは 「信用」だったり 「信頼」だったり あるいは「奉仕」だったり

 しかし 変えないだけでは 100年以上も続けることは 至難であり

 その時々の 時代や人々の流れに逆らわず 先を見据えた 新しい技術やサービス等

 を取り入れていく 「流行」を 見誤らない実践力も 携えていたのだと思います

 

 開設からこれまでの 20年を振り返り 

 あらためて やすらぎ霊園の 「不易」を 問うてみます

 私たちが 常に 心がけていますのが お客さまからの「信頼」です

 一朝一夕にして いただけるものではなく 毎日毎日の実践から 少しずつ

 見えない成果として 積み重なって いくものだと 思いますので

 これからの10年 20年と さらに 多くの「信頼」をいただけるよう 

 誠心誠意 努めていきたい と 願っています

 

 

               【春の桜の 先頭を切って咲く 寒緋桜】

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f:id:yasuragi-reien:20170207092834j:plain 「コロナ禍の 土手に伸びゆく 蕗の薹」

        

 

  

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回顧録 no.100  「‥夢の風景 ~館長との 別れと 出逢い」

 


  「~館長との 別れと 出逢い」

 

        その朝は 冬一番の 寒さだった

  平日だったから 時間帯を過ぎると 外にいる 住民は少なく

  だから 発見されるまでに 時間がかかりすぎて 

  その時には すでに 亡くなっていた という

  心臓に持病があり 自分でも 特に 気をつけていたと 聞いていたが

  この時期 どうしても 手入れしなければならない 庭木があって

  奥さんが 出かけた後 庭に出てて 発作に襲われたらしい

  その時 どのような記憶が よぎったのだろうか

 

  通勤時 家の前を通ると いつも庭先で 花木の手入れをしていた

  几帳面な性格らしく どの花木も 見事なまでに手入れて 美しい庭だった

  始めは 挨拶を交わす程度 少しして 花木のはなし 次に 趣味など

  その次は 休日の懇談 と 距離が 近づいていく

  学校長まで務め 退職後は 請われて 団地内公民館の 館長を 引き受けていた

  いつも 優しい笑顔 とつとつと 語る 話題は とても豊富で

  苦労して 今がある そんな人らしく 示唆に富んだ話には 

  どれほど気づかされ 救われたか

        時を忘れた頃 やがて 妻が 苦笑いしながら 迎えに来る

  

  退職後 しばらくは 近くに土地を借りて 野菜などをつくっていたが

  心臓への負担や 足腰も弱くなって と やめた後は 庭の手入れが 日課だった

  ちょうどその頃 僕らも 団地内の空き地を借り 野菜づくりを 始めていたから

  館長に 教えを請うた 

  時々 様子見に来ては 手取り足取り 指導する  

  使わなくなった 耕運機をはじめ 必要な道具は ほとんど 無償で提供してくれ 

       お礼に届ける 野菜を見て 評価するのも 日課になり  

       3回に1回は 「うーん これは?」 と 首をかしげるのだ

       そんな 温かい交流が ずっと 続くと思っていた

  

   一人残された奥さんは 一周忌を終えると 親の介護もあって その家を去り

  直ぐに買い手がついて 新しい家族が入った

  館長が 愛情込めて 手入れしていた庭木は 少しずつ 色や形を変え

  無残な姿を さらし始めると いつの間にか 更地になり 

  やがて 物干し台が 庭を占めるようになった

    

  そうやって 目の前から 館長の面影が 亡くなっていき

  褒めてくれる人が いなくなった 野菜づくりも 足が遠のいて 

  意識して 記憶を 消してしまおうと していた  

  それでも‥

  この季節になると 館長が 記憶の向こうから 帰ってきて

  顔を くしゃくしゃにして 笑いながら 「これが楽しくてね~」 なんて

  晩酌の 手真似をするのだ 

  僕たちは 時々夢で逢い 一緒に 野菜を つくっている‥‥

 

 

 

  

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霊園風景 その99  「‥造花の供花」

「‥造花の供花」

 

 お彼岸や  お盆ともなりますと 多くのご家族がお墓詣りに来園されます

 お墓を綺麗にし お花を供え ろうそくの炎で 線香に灯りを灯し

 手と手を合わせ ご先祖様を敬い 亡くなった家族を偲び 私たちが

 今 生きていること 生かされていることに 感謝の誠を捧げ 頭を垂れます 

 

 夕暮れ時 人気のなくなったお墓に 彩を添えてくれるのが 供花です

 以前は 菊の花と榊の組み合わせが 一般的だったような気がしますが

 この頃は 季節ごとに 花の種類も異なって とてもカラフルになってきました

 とりわけ 異彩を放っているのが 生花ではなく 生花そっくりの 造花です

 昔の造花とは 大きく違い まるで水気を含んでいるかのような 微妙な色合いまで

 表現してくれて その鮮やかさは 生花を 圧倒しています

 

 やすらぎ霊園でも 全体の 2~3割程度は 造花が占めるようになり

 その割合は 少しづつ 増えて きているようにも 思われます

 特に 新しく建立したお墓ほど 造花が 多い傾向にあるようで

 夏の暑さでも 冬の寒さでも 変わらぬ 色艶と 鮮やかさを 誇ります

 ただ 灼熱の中でも 光る百合の花 凍てつく寒さの中でも 輝くカトレアの花

 季節には ない花が 自然の中で 咲き続けている光景は 

 少しだけ ざわつき感があるのです

 

 生花 造花 どちらも 一長一短あります

 生花 春夏秋冬 その時期真っ盛りの花を供えます

    つぼみが開き 満開の時から 散り時を迎え 新しい花へと 引き継ぎ

    それは 人の一生にも似て 自然界に与えられた 約束を 学ぶのです

    散りかけや 枯れかけの 花々にも ひとことの 主張があるようで

    風流と言えば 風流でもあるような 気はします

 

 造花 春夏秋冬とは 無関係に いつも 変わらぬ 美しさを提供します

    蕾は蕾のまま 満開は満開のまま 朝も昼も夜も 何カ月も 変わることは

    ありません

    軽いため 風が強いと たちまち飛ばされて あちこちに散乱し

    それでも 枯れることなく 光り輝いてる この花たち どこに戻せば

    

 皆さん それぞれの 想いの中で 迷いながら 選択しているのでしょう

  あなたは どちら派ですか?

  

          【夕暮れ時 色鮮やかに 造花の供花】

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f:id:yasuragi-reien:20170207092834j:plain 「生花無く 供花が映えて 笑う春」

 

 

  

 

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回顧録 no.99   「‥夢の風景  ~豪放磊落が 逝く」 

 「~豪放磊落が 逝く」

 

  N先輩 背が高く 体重もあり 歩幅は 僕の倍近くあった

  ずっと 坊主頭 目も鼻も   口も大きく 見下ろされると 覚悟するほど

  裏腹に とても優しく 決して 自分から 喧嘩を売ることは なかった

  売る前に 相手がひるんで 喧嘩にならなかったのだ

  仲裁役には うってつけで 中に入った途端に すぐ 双方が槍を収める

  夜の街でも 周りが避けるほどの 存在感があって  用心棒としても

  最高の 先輩だった

        但し、ひとたび 喋ると その勢いは 一気に 萎えることになる

  とにかく 容姿からは 絶対に 想像できないほどの 緩やかな高音が発せられ

  さらに 話好きだったから お喋りする先輩から どんどん 厳つい印象が

  雲集霧散してしまい 後は‥   

 

  だが 上には上があるもので 先輩のお父さんは 

  今でも 語り草になるほど 息子以上に 有名な人だったらしい 

  汽車通勤だったが 行きは 学生たちに 厳しく 躾を行い

  帰りは 座るや否や 毎日宴会 車掌さんも 最後は諦めていたという

  優しい上に 息子譲り(?)の話好きで 誰彼問わず 話しかけていく

  「学生に飲ませた」とか「おばちゃんたちと一緒に歌っていた」とか 

  話題にも 事欠かず その路線界隈では 知らない人は いないほどとなり

  お父さん見たさに乗ってくる いわゆる野次馬さえ 出たそうで 

  もっともこれは 面白くするために 後で 拵えた話かも 知れないけれど

  それほどに ユニークな お父さんのもとで 先輩は育った

 

  退職後 久しぶりに 先輩と逢ったのは 妻が入院している 病院で 

  後ろ姿だけで 直ぐに わかった 

  どんなに人が多くても   頭一つ天に近く それも 坊主頭だから

  だが 心なしか あの頃より 痩せて 背中も丸まっている

  「おぅ! 元気か?」 

  かけてくれる 言葉が細く 艶も乏しい

  「先輩 今日は?」

  聞く前に

  「どこか 悪いのか?」 と 先行される

  妻の話をすると しばらくの沈黙の後

  「俺も 似たようなもんだ 一緒に 頑張ろうや な!」

  なんて 笑いながら 優しい 励ましの 声がする

 

  それから 3年ほどして 

  N先輩は 自宅に近い病院に入院し 日を経ずして 彼岸へ渡った

  秋盛り 葬祭場の向かい側 道路を挟んだ駐車場 

  その傍に立つ 紅葉は 赤黄に染まり 

  別れを告げるかのように 吹く風に 舞い上がる

  記憶にあった 優しい声が 一緒に流れていく

  「さらば!」なんて 言って 振り向きもせず 空へ還る

  

  N先輩には 感謝しても し尽くせない 恩がある

  悔やむのは その恩を 言葉で 伝えないまま   だったこと

        職場を離れて 新天地に 飛び込むかどうか 迷っていたとき

  合理化で 人減らしが 進んでいるとき だったから

  職場の声は 大半が 出て行くことに 反対だった

       その時 あの温和な先輩が 皆の前に立ち 

  「彼が 決断したことを尊重して みんなで 支えましょう」

  大きな体を曲げて 頭を下げてくれた

  だから‥   今がある 

  棺の前で お礼が遅れたことを 詫びた  

  

       またひとり 尊敬すべき 豪放磊落が 逝った‥ 

  

 

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