やす君のひとり言

やす君の情景

~大分市竹中やすらぎ霊園~

夢の風景

回顧録 no.58 「‥夢の風景 ~夏休みの 新吾十番勝負」

「 ~夏休みの 新吾十番勝負 」 小学校の夏休みの夕刻 当時 村に一軒しかない 公民館 そこまで 家族そろって 映画を見に行く 何もない 村唯一の娯楽が 忘れた頃に やって来る 巡回の映画会 公民館は 小学校より遠く 子どもの足で 1時間を超えて歩いた 車道か…

回顧録  no.57 「‥夢の風景  ~何も言えなくて 夏 1/3」

「 ~何も言えなくて 夏 1/3 」 その歌を 聞いた瞬間 はるかな昔の 自分に還っている 記憶は 不思議なもの いつもは忙しさや 目の前のことに かまけ その出来事などは 心のどこにも 存在しないのに ふとした時 まるで 昨日のことのように 心の中に 小さく 浮…

回顧録 no.56  「‥夢の風景  ~乗れない自転車 2/2 」

「~乗れない自転車 2/2 」 校庭の向かいに 川が流れ その先から なだらかな傾斜で 山が続く 杉や檜の 濃緑に混じって ブナや紅葉が 着飾り始める 校庭の桜葉も 色づきながら やがて 季節が冬に向かう 頃 僕は まだ 自転車に乗れなかった 気弱だったから 友…

回顧録 no.55  「‥夢の風景 ~乗れない自転車  1/2 」

「~乗れない自転車 1/2 」 春 小学校の 小さな校庭の隅に 子供用の自転車が 置かれていた 当時 自転車を持っている 友達は少なく 持っている自転車も 大人のお下がりの サドルに座れない 大きなもので だから 乗れる友達も限られていた 真新しい 青色の自転…

回顧録 no.54  「‥夢の風景 ~月夜と おじいさん」

「~月夜と おじいさん」 満月の夜で 明るかった 田んぼには 水が張られ 小さな稲の苗が並んでいたから 5月頃だったろう お風呂に入り 夕食もすんで 子供たちは寝る時 なのに 僕は ひとり あぜ道に立っている 寝間着姿に下 駄を履き 片手には 懐中電灯を 持…

回顧録 no.53   「‥夢の光景 ~竹職人のKさん 」

「‥夢の光景 ~竹職人のKさん」 70才くらいだったろうか 奥さんと 二人暮らしの その人は 母屋の下 道のすぐ上にある 小さな 物置の前で 竹細工を しており 顔つきやしぐさからは とても想像もできない? 細やかで 美しい 製品が 生まれていた いつからと…

回顧録 no.52  「‥夢の風景  ~お雛様の春に」

「 ‥夢の風景 ~お雛様の春に」 明かりを消して 夜の窓を開け カ-テン越しの 庭に咲く 桃色の寒緋桜を見ながら 「まだ少し 寒いねぇ」なんて 言葉を かけて ぼんぼりの オレンジ色が 雛壇に降り注いでくる 今年も 灯ってくれた この明かり 電球も切れること…

回顧録 no.51  「‥夢の光景 ~赤いコートのMさん  3/3 」

「~赤いコートのMさん 3/3 」 それから 二人は 喋ることもなく 弁当を食べ続けていた 春の雲が 静かに流れ 晴れと曇りが 交互に届いてくる 高原 そこから見える 空は 限りなく広く そして 長い髪の Mさんの横顔は とても美しかった なぜ あの時 僕は そこ…

回顧録 no.50 「‥夢の風景  ~赤いコートのMさん 2/3」

「~赤いコートのMさん 2/3」 秋のうちにきれいに刈られた 広い高原は ちょうど 真ん中あたりに 小屋があり 春から秋にかけては 牛舎として使われていたが 春浅いその時期は まだ 空家で 種々雑多の農具が 詰め込まれていた その小屋の入口に 担任の先生が…

回顧録 no.49 「‥夢の風景  ~赤いコ-トのMさん 1/3」

「‥夢の風景 ~赤いコートのMさん 1/3」 小学6年生の春 卒業記念行事として 同級生で 遠足に行った 舗装されていない 狭い道を 一列になって 歩いて行くのだが 唸るような音を立てて 時折り通る トラックは 砂利を蹴散らし 埃を巻き上げる その度に 僕たち…

回顧録 no.48  「‥夢の風景  ~理髪店のタカさん 2/2」

「‥夢の風景 ~理髪店のタカさん 2/2」 当時 村は林業が盛んで 毎日のように 木材を満載した トラックが走っており 狭い砂利道路には 危険がいっぱいだった 何かあったのかもしれない と いなくなった 僕を探して 先生は 不安を抱えながら 戻ってきたのだ そ…

回顧録 no.46 「‥夢の風景  深山の寒つつじ 4/4 」

「‥夢の風景 ~深山の寒つつじ 4/4 」 岩の割れ目には 氷柱が下がり ひときわ寒さを感じさせたが まだ見ぬ世界に あこがれる思いの 強さと 後と前の かすかな光が 足運びを手助けしてくれる そして その先には 柔らかな明るさと 匂いのする空洞が続く それは…

回顧録 no.45 「‥夢の風景 ~深山の寒つつじ 3/4」

「‥夢の風景 ~深山の寒つつじ 3/4」 わずかに水が流れる 小さな川には 寒さに震えた 氷が張り Hさんは 氷を割りながら 上流へと 進んでいく 雪と氷で 埋もれた川は まるで横たわる龍のように 冷たい表情を 見せ ピッケルを道案内に よろめきながらも 彼は …

回顧録 no.44 「‥夢の風景 ~深山の寒つつじ 2/4 」

「‥夢の風景 ~深山の寒つつじ 2/4 」 走り続けて1時間ほど 日の射さない 杉林の中の小道が 終わる 僅かな音を立てて 水が流れ 今にも落ちそうな 木橋があった 凍えるような寒さの中で Hさんは手際よく 準備を整え 震えている 私を見て つぶやく 「何してる…

回顧録 no.43 「‥夢の風景 ~深山の寒つつじ 1/4 」

「‥夢の風景 ~深山の寒つつじ 1/4 」 朝 外を見ると 静かに雪が降り続いていた 道もうっすらと白い 昨夜 何気なく 見上げた空は 星ばかりだったから 急に 機嫌が悪くなったのだろう この日は 山に行く約束があった 幹線道路から 脇道に入り さらに 車一台が…

回顧録 no.42 「‥夢の風景 ~次のゴ-ル」

「‥夢の風景 ~次のゴ-ル」 「‥‥‥」 無言のまま 怒りの表情を見せると 曲がった腰を上げて 部屋を出ていく 破れた襖が 音を立てて 喧嘩腰のように せわしく閉まり 西日の射す部屋に 冷やかな空気が 一瞬動いたような 気がした 帰りを喜び 穏やかに 笑顔も見…

回顧録 no.41 「‥夢の風景 ~み空色のバラ」

「‥夢の風景 ~み空色のバラ~」 小高い山から なだらかな曲線を描く 南向きの斜面があった 晴れた秋の昼下がり 澄み切った太陽が 柔らかに斜面を照らしている 水平に造られた 砂利道を 一台の車が 埃を立てて 走ってくる ボンネットの長い 古めかしいトラッ…

回顧録 no.40  「‥夢の風景 ~ 70年前」

「‥夢の風景 ~70年前」 蛇のような 曲りが続き 轍の残る 砂利道だったと思う 暑い夏の午後 灼熱の太陽に照らされた その道を あえぎながら 歩いていく 上るほどに きつさは増したが それでも 峠付近には 涼しさをもたらす 風があって 道の両脇に立つ 細い木…