回顧録no.3 【‥温泉町と祖母のこと 3/4】
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「‥温泉町と祖母のこと 3/4」
豊かさから貧しさへ 生活を変えてきた祖母の唯一の楽しみが 娘が嫁いでいる
温泉町へ行くことだった
わずかばかりの田畑つくりの合間 特に体を休められる冬の時期は いつも かわい
がってくれた 小学生の私をお供に 通い続けた
発電所近くのバス停で乗り換えたが 待ち時間があればバス代を惜しんで歩いた
雪でバスの来ない時も歩いた 子供の長靴にはすぐに雪が入り、手も足もかじかみ
祖母がくれた飴玉を口で転がしても 寒さはごまかせなかった
降り続く雪道を歩く老婆と子供を拾ってくれる車があれば 祖母は 何度も何度も
頭を下げ続けた
今でも 時々 あの風景を思い返すことがある
切り立った山が迫る川の畔の細い雪道と 私の手を引いて歩く祖母の姿を