やす君のひとり言

やす君の情景

~大分市竹中やすらぎ霊園~

回顧録no. 20 「‥‥ 独りで逝った 君へ」

 

「‥‥ 独りで逝った 君へ」

 

 君は 生まれた時から体が不自由で 歩くのが精いっぱいだった

 それでも 明るさは失わず 小さい頃は必死に 後を追って遊んでいた

 君が寂しそうな表情を見せるようになったのは 君の弟が 事故で急死してからだと

    思う 

 まだ 君の父さんは若かったけれど 家業を継ぐはずだった息子が

 いなくなったことに 激しく落胆していた

 君はそれを見ていて 自分が継げないこと 父の期待に応えられないこと

 などで心を痛めていたのではないか

 

 やがて 姉が家業を継ぐことになり 君はそれを境に 家から足が遠のき

 その後 何度か 一人で住む町を訪ねて 逢っていたが そのたびに

 君には 少しづつ 寂しさや辛さなど 言い知れぬ孤独の影が 増しているように感

 じていた

  

 君の父さんが病いで逝き 数年後には母さんが逝った

 それから まもなくして 君は 父や母が待つ彼岸へ 独りで渡っていった

 君が去った 6畳の部屋には 西日射す机の上に 色褪せた父と母の写真が 

 飾ってあった と 聞いた

 

 今 思う

 寂しげな その白い表情や 心のうつろいに 真剣に向き合っていなかった と

 君は いつも別れる時に 「じゃあ また」と 笑顔で見送ってくれたけれど

 本当は もっと話したかったのではないか 聞いて欲しいことがあったのではないか 

 その町に行くたびに 気づけなかったことを 後悔している

 

 君が生きたこの世界は 君にやさしくなかったかも 知れないけれど

 どうか 愛する父母の下では 限りなく幸せであって欲しい

 

 ひとりひとりの この世の幸せと あの世の幸せを 足した数は 

 みんな同じだと思うから

 

 今 君が 父さんや母さんと一緒に眠る 故郷のお墓は 雪の中にある

 

  

 

                     【 記憶の彼方にある 父さんと見送った夕日 】 

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