やす君のひとり言

やす君の情景

~大分市竹中やすらぎ霊園~

回顧録no.21  「‥‥寡黙な祖父とやさしい祖母のこと」 

 

      「‥‥寡黙な祖父とやさしい祖母のこと」

   

   母の生家は 県境近くの四方を高い山に囲まれた 小さな集落

   分家として家を興した祖父は 若いころから必死に働き 祖母と二人で 

   生計を立て 8人の子供たちを育ててきた

   

   食うや食わずの生活だったかな と 後に母は笑って話していたが

   幼い頃から働きに出ていた 母の言葉には 真実味があった

   

   祖父の面影で 強く残っていること

   和服の上から ちゃんちゃんこを羽織り 炬燵の奥から じっと見つめている

          丸いメガネ 手招きはしても 声は出さない 

   静かに 縁側に腰かけ 煙管にタバコをつめ ゆっくりと火をつけ

   煙をくゆらしていた 地下足袋 作業服姿  

 

   祖母の面影で 強く残っていること 

   ふくよかな表情と 穏やかな立ち姿を持つ 優しい心持ちの人

   少し 体を右左に揺らせながら にこにこした笑い顔が 近づいてくる

   祖父と歩くときは 必ず三歩ほど後から続き 見事なまでに合わせていた

   あうんの 歩調や呼吸 それと やりとり 

    

   共に生きた 長い時間の中で 二人の子供を喪い それ以上の孫を見送ってきた

   自分たちより 先に 彼岸へ渡すことが どれほどに つらかったか

 

   山々が色づいていたから 秋だったと思う

   亡くした孫が 山のお墓に埋葬されるとき すでに足腰の弱っていた祖父母は

   家から見送った

   祖母は 顔をタオルに埋め 声を絞るように泣き続け

   祖父は 眼鏡の奥の目を見開き ポロポロと涙が頬をつたっていた

 

   それから 20年以上たった 今

   祖父母は 見送った子や孫たちと 故郷の山に眠っている

   にぎやかな家族の中で 祖父はどんな顔をしているのだろう

   優しい祖母は 祖父の後ろで 笑い続けているだろうか

   

   今年は 好きだった焼酎と和菓子を 祖父母に届けてあげよう と 思う 

   

                【 そちらでも 仲良く歩いていますか? 】   

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