やす君のひとり言

やす君の情景

~大分市竹中やすらぎ霊園~

回顧録 no.26 「‥‥寒い国で出逢った通訳のIさん  1/5」

 

   「‥‥寒い国で出逢った通訳のIさん    1/5」

  

 1989年 11月 初めて訪れた町ワルシャワは 雪が降っていた

この時代 東欧はソ連からはじまった民主化の波が押し寄せ ポ-ランドも

その流れの中にあり この年の6月には ワレサ議長率いる「連帯」が 

 国民の圧倒的支援を受けて 選挙に勝利し 

9月には 現在のポ-ランド共和国が誕生する 

そんな激動の最中に この国を訪れたのだった 

 

市内の到る所に ポスターや横断幕が張られ 人々には 長い圧政から解放され

自由という保障を得て 限りない 希望と夢を 抱きつつ 

新しい時代を歩いていける そんな熱気が溢れていたように思う

 

だが その明るさとは裏腹に 国内は電力事情が逼迫しており 

夜の街はひとりでは 歩けないほどに薄暗く 点々と見える信号機だけが 

異様に明るさを放っており

小雪舞う光景が この世の果てまで続いているかのような 錯覚さえ覚えた

 

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ホテルのロビ-も例外ではなく 少ない明かりと 寒い空気の中で 

たばこの煙と 吐く息が交差し 小声が飛び交う 光景が続く

誰もが 疲れていたし 早く部屋に入りたかった

 

そこに 約束の時間より はるかに早く現れた通訳が Iさん

とても小柄な人で 長い髪を 無造作に後ろで結び 

黒いセ-タ-に分厚いコ-トをまとい 首には緑色の太い毛糸で編んだ

マフラーを巻き  すっかり手になじんだ革のバックを下げて

優しい日本語が ロビ-に流れ 一瞬 空気が和らいだ

‥‥初めまして

この国で初めて逢った日本人は 美しい女性だった  (続く)

 

 

 

 

 

 

 

  

 

  

              

       

 

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