やす君のひとり言

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~大分市竹中やすらぎ霊園~

回顧録 no.43 「‥夢の風景 ~深山の寒つつじ 1/4 」

 「‥夢の風景 ~深山の寒つつじ  1/4 」

 

  朝 外を見ると 静かに雪が降り続いていた 道もうっすらと白い

  昨夜 何気なく 見上げた空は 星ばかりだったから

  急に 機嫌が悪くなったのだろう

 

  この日は 山に行く約束があった

       幹線道路から 脇道に入り さらに 車一台がかろうじて通る 細い道へ

  その道も切れて 小さなせせらぎがあり そこからは 

  ひたすら空に向かって 歩き続ける そして

  行きついた その奥の さらに奥深く 入った 北風の当らない 小さな平地

  そこには 冬に咲く 寒つつじが   群生している という

 

  その場所には 誰も行ったことが ない

  ただ一人 Hさんを除いては 

   

  彼は 体調をこわして しばらく入院し

  退院後も 自宅で療養を続けていた

  前々から 行く約束はしていたが そんなことから

  連絡することも 遠慮していた

 

  「‥今度の休みに どうだ?」

  底冷えのする朝 突然に 電話をもらったが 体調のことがあり 躊躇した

  だが 行かないなら

  「‥ひとりで行く」 という

   行くか 行かないか 返事が 口から出てこない  

  「‥7時に迎えに行く」 

  「アッ ハイ‥」と答えてしまってから 少し後悔した 

    

  ここ数日 降ることのなかった 雪が  

  朝の 薄暗い空から 絶え間なく 地上に落ちてくる

        7時 きっかり ディ-ゼル音の 車が止まった

  Hさんの あの人なつっこい風貌が 出現する

  白髪交じりの 色白のやさしい 笑顔 

  そして‥

  彼は 驚くほどに 痩せていた

 

  上下に紺色の 防寒着を纏っていたが 借りてきた衣装のように 大きすぎる

  指をさして 「似合うか?」と 言った  

  緑色の綿シャツも 首回りがぶかぶかで 言葉に詰まる 

 

  「雪ですが 大丈夫ですか?」 

  「大丈夫! 大丈夫! 俺の車は 4駆だから」 

  「いや そういうことではなくて‥」

  「さあ 行こう 昼までには 着きたい」

  「昼まで?‥」

 

  確かな 運転技術で 雪道を超えていく

  雪が止み ガラス越しの 朝日に照らされた顔は 寡黙なまま 

  まるで 追われているかのような勢いで 

        天に向かって 走り続けた

 

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