やす君のひとり言

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~大分市竹中やすらぎ霊園~

回顧録 no.68  「‥夢の風景 ~一心行の大桜 」

 「~一心行の大桜

 

 20年近く前になる   その大桜を知ったのは

妻が TV放送か 何かで情報を得たのだろう 「行ってみたい」と 言い出し

思い立って ふたりで訪れた

阿蘇大橋を渡り 南阿蘇村へ入る 左手に阿蘇山を見ながら しばらく走ると

右側に きれいに整備された 段々畑などが 見えてくる

道路脇や 田畑の傍には 染井吉野だろうか

何本もの桜が 満開のときを迎え 大桜に近づいている予感がしてくる

 

「あれじゃない?」 妻の声に 窓を見ると 眼下に 入ってきたのは

遠くからでも はっきりと見える 大きな 白い花の固まり  

近づくほどに その桜木は そびえて せまってくるような 圧倒感を覚える 

幹線道路から先は 舗装されておらず この地の住民だろうか 

実直そうな年配の係員が 慣れない手つきで 駐車場へ 先導してくれている

 

満開だった

樹齢は400年以上 枝葉は 剪定したかのよう ドーム型に広がり 

枝張りは 端から端まで 50Mほどもあるという

淡い白さの山桜が 見事なまでに 枝という枝に 埋め尽くすかの如く 咲き誇る

その根元に 眠るのは 400年以上前 戦いで散った武将と その家来たち

妻や子が 御霊を弔うために 墓を建て 桜苗木を植え 一心に行をおさめたことから

「一心行」の名がついたと いわれている

 

多くの家族やカップルが 桜を背景に カメラに収まっていく

「写そうか?」と言っても 頑なに拒む妻 

やがて散りゆく花たちと 自分が 重なることへの 抵抗か

桜の前では あまりにも小さすぎて 恐れをなしたか 

どちらでもない‥ 

妻は 青空の下 吹き渡る春の風に 乗って 届いてくる 

花の色香を 今 ここで 静かに受け止めていたい

ただ それだけのことだった

 

それから 毎年 開花の便りを聞くと 二人で 大桜に逢いに行った

その後 台風により 主幹が折れて 樹形が少し変わったが それもまた 風情があり  

周辺敷地の整備や 公園化などが進み 開花時期には 多くのお店が出るようになった

さらに 幹の周りには 一面に 菜の花が植えられ 桜と菜の花が 同時に開花する 

その風景は‥  

後ろにそびえる 阿蘇山に見守られて 天の国の 花園のように 光り輝く

 

妻が逝った 翌春 大桜に逢いに行った

待っていたかのように 満開の 美しい白花を 青空の下で披露してくれ

その下には いつもと変わらない 妻が 静かに 笑んで 佇んでいた 

 

       【2016年の春 阿蘇山の麓に咲き渡る 大桜と菜の花】

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