やす君のひとり言

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~大分市竹中やすらぎ霊園~

回顧録 no.82  「‥夢の風景 ~沈橋の話」

 「~沈橋の話」

  

  長さ40mほど 一級河川に設置された コンクリ-ト製の その橋は 

  沈橋(ちんきょう)と呼ばれて 地域の暮らしには 欠かせなかったし 

  通勤や仕事でも 重宝されており 渋滞とまでは いかないが 時間帯によっては 

  どちらか一方の車が 岸で待機することも まま あった

  それでも みんな この橋を渡り 遥か上流にある 立派な橋は 万が一の時だけと

  決めていた 

  20分程度 遠回りしなければならなかったし 途中にはカーブが多かったから

 

  沈橋には 二つの特徴があった

  一つ目は 名前のとおり 水が増えれば すぐ浸かってしまうほど 高さがなく

  だから‥ 

  いつもの水量なら 気にも しなかったが 大雨や台風などで 増水すれば 

  すぐ 通行止めになった

  二つ目は 幅が狭かったこと  

  軽自動車なら 安心できたが 普通車なら 少し脇見したり 速度を上げたり 

  運転を誤れば 脱輪する覚悟が必要だった

 

  早出の朝 橋の真ん中あたりに 横倒しになった 軽トラックがある

  上流側の大きな石に乗り 運転席に寝ているのは 顔見知りの 地元のおじさん

  怪我なのでは と 声を掛けると お酒のにおいがして 気持ちよさそうに 目を覚ます

  あ・うんの呼吸で 社有車を持って来て 引き上げる そして 後日 事務所に お酒が届く 

  今なら 大事になるのだろうが あの頃の 世の中は おおらかで 

  時間も ゆっくり進んでるような そんな 幸せな時代だった 

 

  当時 ラジオ番組でインタビューを受けた 職場の後輩

  勤め先を聞かれると  「沈堕」 と 答え 

  「どんな字を書くのですか」 と 問われ

  「沈み橋の沈に 堕落の堕と 書きます」 と 答え

  一瞬の間をおいて ドッと笑いが広がる

   アナウンサーの 返しが 良かった

    「橋が沈んで 堕落までしたら 救いようがありませんね」   なんて

     確かに 救いようは ない  

  だけど  そのおかげで 少しだけ 橋と事業所が 有名になった

   

  あれから 半世紀経つ 

  沈橋は 何度か 付け替えられたものの 今も健在で 

  川を 見下ろす高台の 数本の桜木は 今年も 変わらぬ初夏の光景を 川面に醸し出し

  あの下で 花見をした 仲間との思い出が 流れてゆく川の 音とともに 浮かんでくる

  青春の数年 この地で 過ごせたことは 間違いなく 幸せだった  

  あの自然と あの人々と ともに生きて いくつもの思い出を 創れたことは 宝だ

  社宅址の 草地に立てば 懐かしい人々の 笑い声が聞こえる

  たむろした ガソリンスタンドの粋な若主人 旅館兼飲屋のおじちゃんおばちゃん 

  いつも注文通り仕上げない 床屋のおいちゃん そして あこがれた お姉さん

  家々が 更地に代わり 人々が去っても  記憶は 色褪せることなく 今も そこにある 

  みなさん 元気ですか? 

 

 

              【今も 人々の生活と ともにある 沈橋】

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