やす君のひとり言

やす君の情景

~大分市竹中やすらぎ霊園~

回顧録 no.89 「‥夢の風景 ~夏雲を追う」

 「~夏雲を追う」

 

   しんとした 無音の午後 けだるい空気が漂う 夏のある日

   地上からの 蒸し返しが ほんの少しだけ和らぐ ブナの木の 足元

   眩しげに見上げれば 焼けた緑葉から 差し込んでくる 陽の光

   その遥か向こうの 青空に 根づくかのように そびえ立つ 入道雲

   ふと 思う

   これまで どれほどの夏に どれほどの入道雲を 眺めてきたのだろう と

 

   小学校の夏休み 川遊びの帰り 田んぼあぜ道の すももを 黙っていただき

   捕った大きなクワガタを 友達に自慢して 坂道を上るとき 

   迎えるかのように 向かいの山から 湧き上がってきた 入道雲

 

   夏の休日 焼けるようなグランド 友とふたりで キャッチボール

   街に出るお金もなく いじけたような球が 青空の中を行き来し

   それは そびえる入道雲の白と 交ざり合う

 

   研修期間中の ひととき 休日を利用して 訪れた 露天風呂

   誰もいない 湯船にまったり 友と交わす 無言の友情

   硫黄の煙りの その先に ビール腹のような 入道雲が 笑い立つ

   

      夏の病室から 眺める窓向こうの光景 椅子に座った先輩が ひとつ咳をする

   昼下がりらしい 生温かな風が流れ 曲がりくねった川が 遥か先まで続き

   陽炎の中に浮かぶ山々は 日焼けして 白く輝く入道雲が 見下ろしてくる

 

           高原を横断する一本の農道 脇を覆う夏草たちが 一斉になびいていく 

   行き交う車もなく 窓を開けて 満足そうに笑む 白い 妻の横顔

   バックミラーに 浮かび去る 入道雲の 粋な 一度きりのプレゼント

   

      川遊びした幼馴染 キャッチボールした同級生 心を交した親友 

   教えを乞うた先輩  そして妻‥

   まるで 人さらいのように 夏の入道雲が 僕の前から 

   みんなを連れていき この夏も 隙あらばと 狙ってるかのよう

 

   それでも 次から次に湧き上がり 大空を謳歌する 入道雲を仰げば

   後を追って行きたい 衝動に駆られてしまいそうになる

   青と白の その中に この身を置けば 

   どれほどの幸せ感が 訪れてくれるのだろうか と 思ってみたりする

   

   「 おーい 入道雲

    次は どこに行くのだい?  来年も ここに来るのかい? 」

   

   青空を独り占めした 入道雲が 僕を置き去りにして 飛び去っていく

 

   

   

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