やす君のひとり言

やす君の情景

~大分市竹中やすらぎ霊園~

回顧録 no.91 「‥夢の風景 ~宝物の小刀」

「~宝物の小刀」

 

    長い間 放置していた  机の引き出しの奥から 小刀が出てきた

 少し 錆びてはいるが 十分に使える 「肥後守」と 彫った 小さな刀

    子供の頃 親にねだり 後生大事 いつもポケットに収まっていた記憶

 あの時代 小刀は 遊び道具づくりの 貴重な道具で そのひとつがあれば

 あっという間に 竹トンボや 竹鉄砲などが 完成した

 

 何故か 手先は器用で

 誰よりも 竹トンボは飛んだし 竹鉄砲は的に当たった

 鉛筆削りにも重宝し 削り上がりは 我ながら 見とれたほど

 山々に囲まれ 街までは 距離以上に離れた その村の 子供時代  

 遊び方や道具は 自分たちで考えて作る しかなかったから

 「肥後守」は なければ困る 大切な 宝物でもあったのだ

 

 あれから ずっと 僕の傍にいたのだろうか

 大人になってから 買った記憶はないから 見えない場所で 

 時を数えていたのだろう

 懐かしく手に取り 砥石で磨いてみる 輝きを取り戻した「肥後守

 「どうだい!!」と 言わんばかりに 自慢げに 小枝を切り落していく

 一瞬で 子供に戻り 幼馴染の顔が 浮かんでは消える

 頑張っている友もいれば すでに彼岸に渡った友もいる

 

 そういえば アウトドアの好きだった Y君も 大きなナイフを持っていた

 いつだったか 一緒にキャンプに 行った時 自慢気に振り回し

 怪我をして 慌てふためいていた光景を 思い出す

 あれから 間もなくして 身軽な彼らしく 走り去るかのように 

 40代の終わり この世に別れを告げた 

 愛用していたナイフは どうしたのだろう

 元気に走り回っていた 男の子がいたから 

 父親になった彼が キャンプで 使っていてくれたら うれしいのだが‥‥

 

 生きているうちに 思いきって 小刀のように 自分を 磨き直してみれば

 もう一度 光り輝く時が 来ることは あるのだろうか

 などと この歳で 叶うか 叶わぬか わからない 願いを 夢見る

 秋の 夕陽を浴びた 縁側にて  

 ひとり笑む おかしさ  次にくる  哀しさよ

 見るひとも 聞くひとも なく‥

  

   

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