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「‥温泉町のA君のこと 3/4」
祖母と温泉町に行った時は 必ずA君の家に遊びに行き いつもと同じように夏休み
や冬休みを過ごし ずっと変わらない日々が続くと思っていた
しかし それから間もなくして 夏休みの間にA君はいなくなった
両親が勤めていた旅館がつぶれ 給料の遅れから借金を抱えていたから 出ていくし
かなかったと 後で伯母が教えてくれた
A君の家はそのままだったが 急いで出たらしく西の窓際からのぞくと いろんな
ものが散乱していた
そこには 彼がいつも読んでいた「赤胴鈴之助」の漫画本が風呂敷からこぼれて
残っており 親に叱られてあきらめる A君の寂しそうな顔が浮かんで流れた
やがてその家は壊されて 一帯に堤防がつくられ 大雨の後の水たまりはなくなり
少しずつ大人になっていく 子供たちの声も小さくなり 温泉町の風景と同時に
A君の記憶も遠のいていった (続く)
【昭和を飾った映画館】