回顧録no.15 「…川の流れと 歩いて逝ったKさん」
「…川の流れと 歩いて逝ったKさん」
Kさんは 20才以上年上の 大先輩で
怒ると怖かったが いつもはやさしく 手取り足取り
熱心に仕事を 教えていただいた
その いかつい表情からは 想像しがたいほどに 品のある 美しい文字を書き
毛筆で届く年賀状には いつも 励みの言葉が 連なっていた
わたしが職場を離れるときに かけていただいた言葉は その後も大きな力になった
「あなたの仕事は みんなでカバーするから
あなたは みんなのために 頑張ってほしい」
そうして 背中を押して送り出してくれた Kさんは
わたしにとって 大きな支えであり 困ったときの 相談役でもあった
例年になく寒い日が続く お正月 Kさんからの年賀状は 3通届いた
「いつまでも 元気に頑張れ!」と 何回も書き連ねてあった
そして 春遠からずの 穏やかなある日の朝 Kさんは 散歩に出て
帰ってこなかった
近くを流れる川にそって 歩くことが 大好きだった という
Kさんの歩いた川岸に立ち 夕暮れせまる中で 別れを告げ 花束を流した
今でも 励まし続けてくれる Kさんの声が 聞こえる時がある
「頑張っているか?」と・・・
「Kさん 今 どのあたりを歩いていますか?」