「…駅頭で泣いた M君へ」
長く人とふれあって 脱帽させられたのが M君だった
誰よりも深く考え 誰よりも鋭く発言し 誰よりも先に行動した
そして 彼のつくる企画書や文章は 全く赤ペンのつかない 完璧な形で出てきた
M君の愛用する革の鞄や靴は 年季が入り かなり古かったが いつもピカピカで
裏表のない 彼の性格と同じように 明るく輝いていた
土日の活動も多かったが 他の用事を犠牲にしてでも 彼は参加した
やって見せ それから指導し 時には叱咤し 励まし 褒めた
辛抱強く自己主張し 相手の非については 冷静に反論し
己に非があれば すぐに頭を下げた
そうしたM君の姿勢は 多くの共感者を創り 彼をめざす 若者も現れてきた
M君は いくつもの夢を持っていた
中央で頑張る夢 政治家になる夢 そして 地域や社会をより明るくする夢
だが
多くの夢をかなえることなく 彼は 若くして 病でこの世を去った
最後の一瞬まで輝きながら 彼らしく 早足で 別れを告げた
M君が いなくなった朝
新橋の駅頭で 携帯を耳に押し当て 泣いた
面白おかしく 生きていくことが 当たり前のような時代
義務は嫌がり 権利ばかりを主張する 自己中心的な時代
マスコミが叩けば それが正義とばかりに 喜ぶ時代
彼は それと真反対の 生き方をしたリ-ダーだった
自己犠牲をいとわず 生きることに真剣で 正義は自分で判断した
あれから十数年 M君のようなリ-ダーには 出逢えていない
彼は 今も あの靴を履き あの鞄を抱えて 歩き続けていると 思う