やす君のひとり言

やす君の情景

~大分市竹中やすらぎ霊園~

回顧録no.24 「‥‥ カレーうどんと T君一家のこと 2/3」

「‥‥ カレーうどんと  T君一家とのこと 2/3

 

   

 その冬は 近年にない大雪に見舞われ 設備確認のため 徒歩による巡視指示があり

 M町から いくつもの山を越えた彼方にある T君の家近くまでが 担当になった

 先輩と二人 巡視路に入ったのが 朝の10時頃だったと思う

 

 ずっと 重い雲が立ち込める中 小雪は降り続き 膝丈ほどある 積雪は 

 山に分け入るほどに 深くなり 山頂では 腰まで雪に埋まった

 歩道は雪の下にあり 一面真白き肌の上に 記憶と勘だけで 

 次の鉄塔をめざし 新しい足跡を残していった

 

 それから 5時間余り 

 T君の家が見えたとき ふいに 遠くのふるさとや 父母の暮らしを 思い出し

 元気でいるか と 雪降る空に向かって 訪ねた 

 

 T君の家も 雪の中にあった

 戸を叩くと お母さんは「まぁ‥」と驚きのひとこと

 お父さんは 「こっちへ」と 火のある釜戸へ案内し

 風邪で休んでいた おばあさんも 起きてきた

 そして T君が笑顔を 見せて

 「すごいねー」と 言いながら タオルを出してくれた

 

 お母さんが 作ってくれたのが 当時発売されたばかりの カレーうどんだった

 T君が 家族にと買っていた貴重食を 6人でいただいた

 おばあさんは 食べれないと言いつつ 碗に移してくれて

 

 優しさ以上の優しさが詰まった 美味しいカレ-うどんは 

 半世紀近くになる今も なつかしくて   忘れられずにいる 

 時々に 食すカレ-うどんが あの冬の光景に 引き戻してくれそうで  

 それほど 記憶に残るほどの 美味しいカレーうどんだったのだ

 

                              (続く)

 

 

 

 

       【‥‥静寂な原野に そびえ立つ 鉄塔たち】

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