やす君のひとり言

やす君の情景

~大分市竹中やすらぎ霊園~

回顧録 no.42 「‥夢の風景 ~次のゴ-ル」

 

「‥夢の風景 ~次のゴ-ル」

 

  「‥‥‥」

  

  無言のまま 怒りの表情を見せると 曲がった腰を上げて 部屋を出ていく

  破れた襖が 音を立てて 喧嘩腰のように せわしく閉まり

  西日の射す部屋に 冷やかな空気が 一瞬動いたような 気がした

 

  帰りを喜び 穏やかに 笑顔も見せていたが 

  施設の話が出た途端 機嫌が  下り坂になった

  何もしない あんたが 何を言うのか‥‥ 

  黙っていても 顔が 言っている

 

       2年ほど前から 認知症が進み 独り暮らしは むずかしくなっていた

  親せきなどから勧められていたこともあり

    

  「施設に入ったらどうか‥」

  

  などと 説教じみたことを 口にしてしまった  

  後悔の後の 自分を 自分が責めた 

   

  嫁いでから 70年近く 人生の全てを捧げてきた 思い出の詰まるこの家が

  心の拠りどころに 違いないのだ

  日が沈んでいく 同時に どうしょうもない いらだちが膨張してくる

  何か しなければならないのに できない   

  

  そして‥

  

  今の生き様や 帰らぬ過去の 責任を 

  何処かの 誰かに 押し付けようとしている 情けなさ みじめさよ

  生き方の選択も 挑戦する機会も 幾度か あった だが しなかった

  それを決めたのは  自分 それが全てではないのか と 己を戒める 

   色褪せた畳に映る影に向かって 頭を下げた

  「夕食できたよ‥」 と 機嫌の直った声が呼んでいる

  簡単な料理しか作れないが どこにもない 舌がおぼえた なつかしい味

  あと どれくらい あの料理を 味わえるのだろう

 

  大切にしなければ‥‥

 

  ふがいなさや やるせなさの 類をまとめて ふっと 吐き出す

     もう少し 自分に誇れる 生き方を探してみよう 

  夕陽に 後押ししてもらいながら 「よし‥」と つぶやいていた

  

        夢と うつつを 行き来しながら 残された日々を 数えてみる

  年で あと何年  月で あと何か月  日にすれば‥‥

  今からでも 生きた証を 探して見れば

  過去は戻らないが 少しでも 未来は変えられる かも しれない

  残された日が 長いか 短いかは 考えまい 

  たどり着いたところが わたしのゴ-ル       

  

  

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