やす君のひとり言

やす君の情景

~大分市竹中やすらぎ霊園~

回顧録 no.78  「‥夢の風景 ~この世とあの世」

 「~この世とあの世」

 

     緩やかな坂道が続き 陽炎のように揺れた 遥かな先に 海が見える

    春から夏に移る 晴れた 風のある 昼下がり  

   家庭訪問を終えて その風に 押されるかのように 坂道を下っていく

   人影はまばらで そして なぜだか 誰もが 海をめざしている

 

   少しずつ 中心部が近づいてくる 

   道の右側は 華やかで 人や車が絶えない 木々の緑も 鮮やかに映っている

   道の左側は 人影も少なく 街並みも くすんでおり 立ち並ぶ 古いビルの窓は開かれ

   ちぎれて色褪せた カ-テンが 風の中で揺れ動き 木々の緑も 生気なく見え隠れする

   空の色も 違って見えていて

   右側の空からは 春名残の光が 町中を キラキラと 輝かせ 

   左側の空からは 薄曇りの ぼんやりした 夕暮れのような 光が届いている

 

   左側の街並みが すぐ下に見渡せる 広場で 足を止めた

   暗い印象だけの光景が 目に焼き付いて なぜだか そこで 躊躇している 

    

   どれほどの時間 そのベンチを 温めていたのだろう

   ふと目を覚ますと 坂道から 笑い声が下りてくる

   振り向けば 懐かしい顔ぶればかり  その先頭は 母だった

   あの最後の夜 着ていた服が 母の笑顔を飾っている

   そして 叔父や 叔母や 祖父母まで 元気に笑い 歩いてくる

   最後に 父がいて あの頃のような 静かな笑顔が ゆったりと 見え隠れ

 

   「元気かい?」

   思わず声をかけると とびっきりの笑顔で 母がうなずく

   父は 黙って 僕の肩を やさしくたたいた

   父と母が 幸せそうに 見合っている 

   「じゃー またね」

   そう言うと 二人は手をつなぎ みんなの後を 追って行く

 

   いつの間にか 左側の空も街も 風景は一変しており

   明るい陽射しの中 あのカーテンたちが 色鮮やかに蘇り  母たちを

   迎え入れるかのように 風景の中で踊り舞い 温かい光が 包み込んでいく 

   

   みんなの後ろ姿が 涙でぼやけた

   父や祖父母たちと 母が笑っていた  

   それだけで 嬉しかった 

   永い間 苦労した分 幸せで いて欲しかった 

   軽やかに跳ねる母と 優しく笑う作業服の父  

   28年ぶりの再会に 初夏の陽と風が 優しく交差する

 

   桜 咲く頃に見た この世と あの世の 幸せな夢‥ 

 

  

   

   

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