やす君のひとり言

やす君の情景

~大分市竹中やすらぎ霊園~

回顧録 no.84 「‥夢の風景 ~花の東京 」  1/5

   「~花の東京」      1/5

     

     初冬の 日曜日の午後 薄曇りの空の下 百貨店の屋上 ざわめきの中から

     離れ

     ひとり 端のベンチで 時間を持て余している

              妻と子供たちは 買い物に夢中で おそらく ここにいることすら 忘れて

     いのだろう

     そんな 嫌味のひとつも 呟きたいほど この街の 乾燥さに 苛立つ自分

     がいた

 

     転勤して 半年近く 妻子は 喜々としている様子が あからさまだったが

     自分だけ いつまでも 東京という街の 空気に慣れなかった

     仕事は 昼夜の境なく忙しく 頻繁にある地方出張は 気が抜けず 

     外に出れば 朝から夜まで 容赦ないほどの 人の波が 押し寄せてくる

     歩いていても  電車に乗っていても  食事の時でさえ  

     当たり前のように せかされている 被害者的意識が いつも付きまとって

     いた

 

     毎日が 憂欝で 味のない乾燥した日々にしか 思えなかった 理由が ま

     だある 

     この道を選んだとはいえ 喜んで来たものでは なく

     トップから 毎日のように懇願され 泣き落としに あい  

     出口を塞がれた 自分には 「わかりました」 しか 残っていなかった

     そして‥

     自分のどこかに 一度は東京 という 希望があったことも また事実で

     その 甘さも許せないことが重なり 何時も 足元が 震えているような感

     覚から

     抜け出すことができなかったのだ

 

     街の景色も 好きになれなかった

     夜の華やかさに 反比例して  朝の汚れが 色濃く映り

     申し訳程度に立つ 街並みの木々は  色褪せているようで

     雨上がりで 澄んでいるはずの青空は  ビル陣が 覆い尽くし

     何かに追われるように 気ぜわしく 街を歩く人々との 呼吸が合わず 

     特に 駅舎内の 我先に の 速さには ついて行けなかった

 

     だが 送り出してくれた人々の期待や 先輩たちの功績など 引くに引けな

     い 現実 

     妻を説得して 家族で転居してきたことにも 応えなければならない 現実

     そして 病がちだった父と母を 故郷に残して 遠く離れた 現実

     そうした もろもろの思いが 輻輳すれば 前を向くしかなかった

     いつまで 続くのか  見えない道程を 手探りで辿っていく 花の東京

                                    (続く)

 

 

           【4年住んだ 真東向きの賃貸住宅】f:id:yasuragi-reien:20200705143726j:plain

 

   

   

 

 

 

 

www.yasuragi-reien.jp