やす君のひとり言

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~大分市竹中やすらぎ霊園~

回顧録 no.28 「‥‥寒い国で出逢った通訳のIさん 3/5」

「‥‥寒い国で出逢った通訳のIさん 3/5」

  

  いつ飛ぶか 案内もないまま 時は経ち すでに予定より2時間ほど 遅れ

  半ば あきらめかけたとき アナウンスが 飛ぶから搭乗を急げ と叫ぶ

  依然として 雪が降り続いているのに なんでの 不満と不安が 増幅していく 

  

        50mほど 凍った滑走路を歩いて プロペラ機へ 乗客の数は30人ほど  

  そして なぜか機体の前には 銃を構えた若い兵士が 立っており

  寒さを味方にして 不機嫌な表情で ジロリと睨む

 

       最後に タラップを上ったと 思ったら 後からの 足音

       案の定 兵士が搭乗し それを合図のように ドアが閉められた

 

  そして  彼は 私の 真後ろの最後尾に 座った

  威嚇しているのか 銃を触る 機械的な音が 時折り 耳につく

  

  飛行機の内部は 貨物機を改造したかのような 殺風景なつくりで

  機内誌もなし 飲み物もなし サ-ビスという言葉自体が 存在しない

  暖房も 効いているのか いないのか 寒さが 異様に堪えてくる

 

  隣のIさんを 見ると 辛そうな表情が 眼に映った

  ‥‥大丈夫ですか 

  ‥‥少し 熱があるような  

  そういえば 今朝逢った時から 元気がないな とは思っていたが

  もしもの時にと思い 持っていた風邪薬を 差し出す

  Iさんが いなければ 仕事にならないのだ

 

  雪の中 北へ向かう プロペラ機の 騒がしい音だけが 静寂さを防いでいた

                                 (続く) 

 

 

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