霊園風景 その44 「‥菜の花の光景」
「‥菜の花の光景」
以前 住んでいた家の近くには JRが走っており ある踏切から見える
早春の光景は 記憶の中に生き続けて この時期なると 心はいつも
その場所に 佇んでいます
少し 右カーブしている レールの両側には 少しずつ空地があって
そこに いつの頃からか 一面に 菜の花が 咲くようになりました
とても 菜の花が好きな人がいて 誰もいない時に 列車の来ない時に
そっと 種を蒔いてくれたのかも 知れません
危なかったでしょうに どうやって 蒔いたのでしょうか
ともあれ そのおかげで みんなが春の訪れを 楽しめるようになりました
とても美しいなと 思うのは 青空の中 少し陽が上がって
海側から あの列車が 近づいてくるときです
潮風を運んでくる 列車の色は 赤と象牙のツートンで
菜の花の中を 鮮やかに しなやかに 通り過ぎていきます
三色が混ざり合って別れ そして いっせいに風になびく 菜の花群を見たとき
春が来てくれたことや 今 ここにいられることが
とてもうれしく ざわざわと 心躍るときなのです
それは
買ったばかりの真新しい本を開いた時の 香り
洗い立ての白いシャツに袖を通した時の 手触り
小雨降るバス停で傘を傾けてくれた時の うれしさ
大切な人から届いた封書を開ける時の いとおしさ
何気ない 日々の中で ふと立ち止まると 見えてくる 幸せ感
などに似て‥‥
ささやかな日々の中で 見えないけれども 心の中が 温かくなるような
大切にしたい 当たり前で 普通にある 幸せの光景
その 象徴が 菜の花のような 気がしてなりません
今年 やすらぎ霊園でも 菜の花の種を蒔き 育てています
ここを訪れる人や ここに眠る人が その色から 春を感じてくれて
痛みや辛さを 少しでも 和らげることができたら と 思います
【早春を歌う 幸せの光景】
【やすらぎ霊園内 今朝の菜の花 12/24】
「菜の花を 美味しい色ねと 子と笑い」