やす君のひとり言

やす君の情景

~大分市竹中やすらぎ霊園~

回顧録 no.59 「‥夢の風景 ~何も言えなくて 夏  2/3 」

 

 

「~何も言えなくて 夏   2/3」

 

 それから 何日か開け 職場に電話を入れて 断ったことを 報告した

 電話の向こう 「ありがとう‥」以外は ほとんど耳に入らなかった 

 

 その年の夏 陽炎が立つほどの 暑い日が連続する頃まで

 あのひとから 連絡もなく 喫茶店にも ほとんど行かず 

 平日の仕事と 休日の野球 同じことを 繰り返す 日々

 

 先輩に 断りの話をしたとき ではなく 

 先輩から 紹介して欲しい と 言われたときから

 どこかに 落ち着きようのない 自分がいることが わかっていた

 そして 断ることを 申し訳なく思いながら 一方で ホッとしている 

 自分を 知ったとき そのひとに 対する 想いを 感じていた

 

 一方で 僕は

 あの夜 先輩に断りの話をした時から ずっと さいなまれ続けていた

 それは  必死に話した 先輩の 一途な想い‥  自分の気持ち‥ 

 そして  それらを 看過し 覆い続けていること 

 

 夏も終わろうという頃 また 職場宛に 手紙が届き

 あの 梅雨前のときと 同じ内容だった

  

 お盆を過ぎて 何となく夏が終わるような けだるい月曜の夜

 星もなく 人影もまばらな 町唯一の商店街を 抜けていく

 いつもの喫茶店ではなく そのひとのアパート近くの スナックを

 指定してあった

 

 通りからひとつ入ると 灯りがまばらに並ぶ 

 その一角にあるスナックは 描くイメージとは程遠い 明るい色調で飾られており、

 いかにも 若者受けしそうな 雰囲気を持っていた

 

 「今夜 終わらせよう‥」  

 鈍い決意とは裏腹に 小気味よく 開いた 白いドアは 茶色の漏れる 店内から 

 心地良い 冷たい空気を 運んできた

                                  (続く)

 

 

 

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