やす君のひとり言

やす君の情景

大分市竹中 花と緑に囲まれた公園墓地                                                           ~やすらぎ霊園~

「温泉町のA君のこと   4/4」

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 あの温泉町が遠のいてから 10年以上が過ぎ  社会人となって間もない頃 

 ふとした便りで A君が近くの温泉町で働いていると聞いた 

 両親も元気で一緒に暮らしているという

 

 なつかしさに押されて電話を入れ 流れてくるやさしい声を聞いたとき あの 

 にこやかな笑顔の A君にたどり着いた

 

 A君は 父親の後を継いで板前になっていた  

 

 親が苦労して育ててくれた分 頑張って楽させてやりたいと話す A君

 似たような環境で生きてきた 自分と重ね合わせて うなずく 

 

 近いうちに会うことを約束したそのとき 僕たちは小学生に戻り 

 あの温泉町の あの家が あの映画館が なつかしく浮かび上がってきた

 

 それから 間もなくして 彼は ひとり自動車事故で 逝った

 

 雨の夜運転していて 海にかかる橋の欄干にぶつかったと聞いた

 なぜ 苦労して生きたA君が 若い命で終わらなければならないのか 

 これから  幸せな人生を送らなければ 世の中は不公平になるのに 

 

 海から昇る朝日に向かい 力強く 大きく 羽ばたいていったのだと 思った

 

 彼は今 あの温泉町の近くのお墓で 両親と一緒に眠っている 

 親子で一緒に 板場に立っているのだろうか 

 A君が自慢する料理を 一度でいいから 食べてみたかった      (終)

 

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