やす君のひとり言

やす君の情景

~大分市竹中やすらぎ霊園~

霊園風景 その55 「‥柔らかな 若葉たちへ」

 

 「‥柔らかな 若葉たちへ」

 

   桜の謳歌が終わり 季節は五月へ

   花木や 草花も 元気に花を咲かせ それぞれに美しさを競います

   それでも この季節の主役は 新緑だと 思うのです

   

   遥か彼方から 若草や若葉 そして深碧や山葵の新緑が 色模様を織りなして

   点々と 柔らかな赤みを帯びた 小麦色の若葉が 彩りを添え

   四方の山々が 鮮やかさを 競い合っているかの よう

 

   朝夕の陽に映えて 緑溢るる 自然の光景は 人々に いくつもの 想いを

   蘇らせ 駆け巡っていきます

   

   それは 一家で働く田植えであり 友と遊ぶ里山であり

   それは 父や母を迎えた小道であり 祖母を見送った墓道であり

   それは ふるさとに 別れを告げた時の 遠山の光景

 

   ひとつひとつの 還らぬ自然は たとえようもなく いとおしく

   思い起こせば 心は いつも 空を飛んでいる かのような 高揚感

   昨日の辛さや苦しさを 片隅に押しやり 

   かすかにでも 今日や 明日への 夢や希望を 灯してくれる充足感

          

   若葉が揺れ 光と影の間から 勇気が届いてきて 前を向くことができる 

   そうして 何十年もの歳月を 織り込んで 誰でも 自分だけの人生模様を  

   描き出してきました

 

 

   ありがとう やさしい色たちよ

   暮らしてきた 日々の営みを 振り返りつつ 

   この春の 若葉たちへ 心からの 感謝を 贈ります

 

 

 

 

         【ここから 彼方へ 緑織りなす 霊園風景】

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f:id:yasuragi-reien:20170207092834j:plain   「春は萌え 夏は緑に 紅の まだらに見ゆる 秋の山かも」  

   

 

 

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回顧録 no.54  「‥夢の風景 ~月夜と おじいさん」

 

 「~月夜と おじいさん」

 

   満月の夜で 明るかった

   田んぼには 水が張られ 小さな稲の苗が並んでいたから 5月頃だったろう

   お風呂に入り 夕食もすんで 子供たちは寝る時 なのに

   僕は ひとり あぜ道に立っている

 

   寝間着姿に下駄を履き 片手には 懐中電灯を 持ち

   もう一方の手には 祖母の写真があった

 

   何日か前の夜 夢を見た 

   やはり 月夜の あぜ道  

   前に立った 丸顔の小さなおじいさんは 僕の祖父だと 名乗り 

   今度逢う時 「祖母の写真を持って来て欲しい」  と しわがれ声

   「次の満月の夜に」 と付け加え 僕は 黙ってうなずく

 

           今夜が その約束の夜だった

   田舎の夜はまだ寒く 足元から 冷気が襲ってくる 

   ブルッと 震えた瞬間 蛙の声が止み‥

   

   目の前に あの夢のあと 遺影で見た祖父が 立っていた

   黙って 白黒に霞む写真を渡す それは 可愛がってくれた 僕と

   祖母の 温泉町での写真

   祖母も僕も なぜか かしこまっている

   

   

   「ありがとう」‥‥  

   「ばあさんには ずっと 辛い思いばかり させたから‥

    こっち来たら まず 頭下げて 詫びいれて と思ってな」

   「年取って 記憶もあいまいになって ばあさんの顔も 忘れちまった ようで 

    だけど これで大丈夫 真っ先にばあさんを迎えられる‥」といって 笑った

 

   「ばあちゃん そっち行くの?」

   「近いうちにな そろそろ 灯りも消えるころだ」

   「でも まだ元気だよ」

   「人間 それぞれに 逝くときは 決まっているんだ 定めって やつかな」

   「‥‥」

   「ばあさん孝行しておけよ」

   僕の頭を撫でて くるりと振り向き 月夜の闇へ 消えていった

 

   それから 僕は 祖母を もっともっと 大切にした 

   そして その夏のある朝 祖母は 静かに祖父の元へいった

   あの月夜のことは 夢かうつつか よくわからない

   だけど 祖母とふたりで写った写真は 見つからなかった

   

   祖父は 何と 謝ったのだろう 

   祖母は 何と 応えたのだろう

   でも 祖父は あれから一度も 夢に出てこない だから

   上手くいったに‥  違いない 

   ふたり 仲良く 座って 笑い話 している 

 

 

   月夜の田んぼと あぜ道と 薄暗い 懐中電灯の灯り 

   そうした風景を 想い描いては あの頃に還っていく‥‥ 

 

     

 

     

 

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霊園風景 その54  「‥お墓たちの話」

 

 「‥お墓たちの話」

 

  「来ないねぇー」

  「うん‥」

  「いつ来たの?」

  「‥‥」

  「いつ来たの?」

  「‥‥」

  いつ来たの!!」

  「‥‥ 覚えていない」

 

  「なぜ 来ないのかなぁ」

  「子供たちは遠くに行ったし 両親も 年老いたし‥‥ 

   来たくても来れないんだ  と思う」

  「そうかあ でも お花がないのは 寂しくない?」

  「仕方ないよ それに どうせ すぐ枯れるし」

  「こっちのお花を 少し分けてあげようか」

  「ありがとう でも 君 動けないし 周りにもあるから 大丈夫」

    

  「それより この頃 とてもきれいになったけれど 何かあった?」

  「うん お父さんが亡くなって この前 納骨したの 

   だから みんなでお掃除して お花も供えてくれたの」

  「そうかあ じゃお父さんも 喜んでいるだろうね」 

  「みんなに見守られているから そう思いたい

   だけど お母さんは ずっと泣き続けていて 少し 悲しかった」

  

   「好きな人が いなくなれば 悲しいし 寂しい 

   でも ここに来れば 逢えると 思うし そしたら 

   悲しみなんかも 少しは 和らぐような そんな気もするけど‥」

   「 ‥‥うん そう思いたい」

 

   「 ‥‥ねぇ わたしたちお墓は なぜあるの?」

   「うーーん 今 それ言う?」

   「だって この頃 あまりお墓建てなくなったって よく聞くし」

   「でも 家族そろって ご先祖様や故人を偲んで 敬う そ して

   今 みんなが元気でいることに 感謝する 

   そんな家族の絆や想いが いっぱい詰まっているところが お墓じゃないかな 

   だから これからも ずっーとつづいていく と 僕は思うよ」

  「そうなんだぁ でも良かった みんなの役に立っているだけで 幸せ

   あのお母さん 今度来るときは 笑顔だよね」

  「絶対に 笑顔だよ」 

 

  「でも あなた 石頭と 思っていたけど たまには いいこと言うね!」

  「石 は間違っていないけど たまには は余計です!!」

 

 

   

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f:id:yasuragi-reien:20170207092834j:plain「五月待つ 花橘の 香をかげば 昔の人の 袖の香ぞする」

 

 

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回顧録 no.53   「‥夢の光景 ~竹職人のKさん 」

  「‥夢の光景 ~竹職人のKさん」

 

   70才くらいだったろうか

   奥さんと 二人暮らしの その人は 母屋の下 道のすぐ上にある

   小さな 物置の前で 竹細工を しており

   顔つきやしぐさからは とても想像もできない? 

   細やかで 美しい 製品が 生まれていた

 

   いつからともなく 小学校へ通う 道すがら そこへ寄り道し

   大小のざるや 籠類 弁当箱などの製品が 所狭しと 積まれ

   その前に 申し訳なさそうに 小さなKさんが 座り 

   じゃまにならないよう 少し離れて 僕が座った

   Kさんは 本当に小さかったけど 竹を操るその手は 大きく 逞しかった

 

   「よー」 なんて言って 顔をくしゃくしゃにして 笑い迎える

   ほとんど歯がなかったから 固いものは 食べれなかったと 思うし

   喋っていることも よく聞き取れなかった

 

   手の届くところに 紙袋に包まれた飴玉が いつも置かれており

   行くと すぐに Kさんが 顎でしゃくって 「取れ」と 合図してくれ

   それを 口の中で転がしながら 手の動きに見入っていた

   シンとした時の中で シュッシュッと 竹を削る 小気味いい音だけが 響き

   その繰り返しで 薄く細い形に 仕上げると 器用に編んでいく

   手の動きの違いだけで 籠になり 笊になり 背負い子になる 

   それは 惚れ惚れするほど 鮮やかだったし 早かった  

   

   Kさんは 寡黙な人という 評判どおりで 

   誰かと話しているのを 見たこともなかったし 

   僕との 会話も ほとんどなかった  

   頭には いつも手ぬぐいを巻き付け 春から秋は肌着だけ 

   冬になるとその上に 羽織る 赤いちゃんちゃんこが 定番だった

           いつ頃だったか 西日を浴びて ちゃんちゃんこの中で うたた寝している

   Kさんを思い出す

   

 

   出来上がった籠や笊などは 数が揃うと ずっと下の 道路まで降りていき 

   一軒だけの雑貨屋さんに 卸していた

   いくつもの製品を背負うと 隠れて見えなくなる 小さな体 

   腰を曲げて 小幅で歩いて行く その後ろ姿が

   とても 寂しげだったことを 記憶している

   冬 午後の光景で 影が後を追っていた から かもしれない

 

   そして 帰る時には 必ずといっていいほど 大きな豆腐をぶら下げており

   いつも豆腐だけを食べているのでは と 思わせるほどだった 

   

   「豆腐が好きなの?」  「おぅ‥」  

   間違いなく 好きだったのだと 思う  

 

   小学校6年生になった頃 Kさんを見なくなった 

   体をこわして 入院したと聞いた 

   そして‥‥

   小学校を卒業する頃 Kさんが亡くなった

   使わなくなった あの物置では いくつかの製品が 寂しそうに 身をすぼめ

   しばらくして 物置も 壊された

 

   母のいなくなった 故郷の家 物置を整理していたら 半世紀以上前に

   Kさんから買った 竹製品が 出てきた

   どれもが 傷んでおり 朽ちる寸前のものもあったが そこかしこに

   Kさんの 面影が偲ばれ 捨てきれずに また しまい込んだ

   

   そうやって 僕は 今も Kさんとつながっている

 

       

        【Kさん そっちでも編んでいますか?】

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さつき日和のお知らせ

     ∵∴∵∴∵∴∵∴さつき日和∵∴∵∴∵∴∵∴

 

令和のはじまり、5月1日から6日まで「さつき日和」を開催いたします。

期間中、ささやかなプレゼントもご準備しておりますので、お墓を検討中の方、園内を見学されたい方、お墓に関する悩みがある方など、

ぜひ、新緑が美しいやすらぎ霊園へご家族お揃いでお越しください。

皆さまのお越しを心よりお待ちしております。

ご来園いただいた方に「ちまき」をプレゼント

ご成約いただいた方に「ご当地グルメ」をプレゼント

詳しくはHPをご覧ください。

http://www.yasuragi-reien.jp/2019_satsuki.pdf

 

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~大分へ帰省中のみなさまへ~

 

やすらぎ霊園には「ふるさと納骨墓」サービスがございます。

ご遺骨を手元供養されている方、ふるさと大分で供養をしたい方など、

全国どこからでも大切な方のご遺骨をお預かりいたします。

納骨堂や永代供養墓などやすらぎ霊園が責任を持って供養させていただきますので

まずは、私たちスタッフへご相談ください。

お電話、ご来園でも受け付けております。

 

 

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霊園風景 その53   「 ‥この頃のやす君 」

 

「‥この頃のやす君」

 

   彼が ここ  「やすらぎ霊園」に来たのは 新しい区画が誕生した時 だったから 

 もうすぐ7年になる

 最初の頃は 訪れる人も 少なくて 寂しい思いをしたことだろう 

 晴れた日や 花木が鮮やかな時は 少しは気分も和らいだと 思うけど

 

 雨や雪が降り 暑かったり 寒かったり 時には台風や 地震も来たりして

 そんな時は 人のざわめきもない中 ひとりで じっと 耐えるしかない

 

 それでも 春夏秋冬の 繰り返しの中で 少しづつ 見るものや聞くものが

 変わってきた

 7年の歳月は 木々を太らせ 花々を鮮やかにし 

 なによりも お墓の数とともに 来園者も多くなり 

 静寂さより 賑わいの方が 増えてきた

 

 心なしか やす君も あの頃より 豊かな表情を 見せてくれるようになっている

 彼だって 一人ぼっちの時は それほど好きじゃないと思うし 

 誰かに 声かけたいときも 声かけられたいときも きっとあるに違いない

 僕は 時々 「おはよう」と 挨拶することがある 

 それを ずっと 繰り返していると ときおり 彼の返事が聞こえる気が する

 

 ここで 眠る人たちも 少しずつ増えて お墓の前には 多くのお供えが並ぶ 

 家族でお参りに来る 柔らかな 温かい光景は きっとやす君にも 見えていて

 だから 彼なりに 心ひそかに 喜んでくれている と思う

 

 今日は 晴れの 夕暮れ時 

 向かいや 彼方に見えた 山々の桜も いつか 緑一色になり 

 季節は 晩春から新緑に 衣替えしていく

 日向で くつろぐ やす君  

 動いては いないけれど 心はきっと 躍っている

     

       【 晩春の西日を 背に浴びて 身も心も ゆったりと 】

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f:id:yasuragi-reien:20170207092834j:plain「春の野に 心延べむと思うどち 来し今日の日は 暮れずもあらぬか」

 

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回顧録 no.52  「‥夢の風景  ~お雛様の春に」

 「 ‥夢の風景 ~お雛様の春に」

 

        明かりを消して 夜の窓を開け カ-テン越しの 庭に咲く

   桃色の寒緋桜を見ながら

  「まだ少し 寒いねぇ」なんて 言葉を かけて 

  ぼんぼりの オレンジ色が 雛壇に降り注いでくる

  今年も 灯ってくれた この明かり 

        電球も切れることなく 40年近い歳月

  早春のひと時を やさしく照らし続けてくれた

 

  上の子が生まれてすぐ  苦しい家計の中で 妻が買い求めた

  狭い社宅には 大きすぎるほどの 雛壇

  春が来るたびに 嬉しそうに 子供らと 飾り 近所の友達を招いて

  健やかな成長を祈ってきた

    

  「飾るの 辞めようか?」

  

        二人の子供が 家を出たあと 妻がつぶやいたことがある

  それでも 飾り続けてきたのは 

  いつまでも 健康であって欲しい 幸せな人生を送って欲しい 

  そんな ささやかな 願いを 込められる時間 だったからだ 

  それが‥

  いつからか 体調をこわした妻に代わって 慣れない手つきで 

  飾り付けする 年が続いた

 

  「今年は もう いいんじゃない?」

  2年前の春 いつも以上に 強い口調で 娘が 言った

  

  冗談じゃない‥

  君たちには 言わないが ずーっと 君たちの健康や幸せを

  祈ると同時に 妻のことも 祈ってきたんだ

  先に逝ってしまったけれど きっと 今も あの明かりを 見てくれている

  そう思うから 今年も飾るよ‥

 

  とは 言えずに‥ 

       

  笑いながら 

  「でもねぇ 1年に一度くらい お雛様にも 春の桜を見させてあげよう」

  なんて ごまかしながら 飾っていく  

  美しいいろどり 雛壇の灯りの向こうに 家族の歴史が 見え隠れする

 

  その光景が 消え去らない限り 毎春 出してあげよう 

  そうすることで 家族の絆を つないでいくことができる と 思うのだ

 

 

 

 

           【40年の 微笑み届けて お雛様】

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