やす君のひとり言

やす君の情景

~大分市竹中やすらぎ霊園~

回顧録 no.52  「‥夢の風景  ~お雛様の春に」

 「 ‥夢の風景 ~お雛様の春に」

 

        明かりを消して 夜の窓を開け カ-テン越しの 庭に咲く

   桃色の寒緋桜を見ながら

  「まだ少し 寒いねぇ」なんて 言葉を かけて 

  ぼんぼりの オレンジ色が 雛壇に降り注いでくる

  今年も 灯ってくれた この明かり 

        電球も切れることなく 40年近い歳月

  早春のひと時を やさしく照らし続けてくれた

 

  上の子が生まれてすぐ  苦しい家計の中で 妻が買い求めた

  狭い社宅には 大きすぎるほどの 雛壇

  春が来るたびに 嬉しそうに 子供らと 飾り 近所の友達を招いて

  健やかな成長を祈ってきた

    

  「飾るの 辞めようか?」

  

        二人の子供が 家を出たあと 妻がつぶやいたことがある

  それでも 飾り続けてきたのは 

  いつまでも 健康であって欲しい 幸せな人生を送って欲しい 

  そんな ささやかな 願いを 込められる時間 だったからだ 

  それが‥

  いつからか 体調をこわした妻に代わって 慣れない手つきで 

  飾り付けする 年が続いた

 

  「今年は もう いいんじゃない?」

  2年前の春 いつも以上に 強い口調で 娘が 言った

  

  冗談じゃない‥

  君たちには 言わないが ずーっと 君たちの健康や幸せを

  祈ると同時に 妻のことも 祈ってきたんだ

  先に逝ってしまったけれど きっと 今も あの明かりを 見てくれている

  そう思うから 今年も飾るよ‥

 

  とは 言えずに‥ 

       

  笑いながら 

  「でもねぇ 1年に一度くらい お雛様にも 春の桜を見させてあげよう」

  なんて ごまかしながら 飾っていく  

  美しいいろどり 雛壇の灯りの向こうに 家族の歴史が 見え隠れする

 

  その光景が 消え去らない限り 毎春 出してあげよう 

  そうすることで 家族の絆を つないでいくことができる と 思うのだ

 

 

 

 

           【40年の 微笑み届けて お雛様】

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