やす君のひとり言

やす君の情景

~大分市竹中やすらぎ霊園~

回顧録 no.93 「‥夢の風景 ~白いYシャツ」

「~白いYシャツ」

 

 クローゼットに収まる 衣類たち

 公私含めて 四季含めて どれだけの数 あるのだろう

 ここ数年 仕事用のものは ほとんど買っていない

 それは リタイアする時が 近づいていること

 以外にも あの頃の体型と ほとんど変わっていないこと

 それに シャツなどは 公私の区別を 意識しなくなったこと

 そして 選んでくれたり 褒めてくれる伴侶がいないことが 一番大きい

 

 白いYシャツは 10枚ほどあって 最も年季の入ったものは 15年くらい着ている 

 縮むことも 破れることも なく ボタンも丈夫で 黄ばみも少ない  

 選んだのは ほとんどが妻 

 「いいものは 結局 得だから」が 口癖だった

 そのとおりで 多少のヨレヨレ感は やむを得ないが 今も 現役で頑張る

    ただ 叔父との思い出の シャツは さすがに 手元を離れた

 

 父の葬儀の時 弟になる叔父が 家に泊まった

 祖母が亡くなった時に 逢ったきりだったから  25年ぶりに再会したが

 そのしぐさや 横顔などは 父に よく似ていて

 体も細く 歩く音が小さいのも そっくり

 穏やかな 優しい声も 生きた父を 思い出させてくれた

 

 「お父さんみたい‥」 横で 妻がつぶやく

 母の隣に座る 叔父は 真っ白いYシャツが 良く似合い

 父とは少し違って 町の雰囲気を 醸し出していた

 帰る朝の叔父 Yシャツに 緑色のネクタイが 映えている

 だが 何かが違う 

 襟周りが 少し大きすぎるような それに形も 何となく 僕のシャツ風

 「叔父さん シャツが違わない?」  

 さりげなく聞くと 

 「ん?」 

 「ちょっと大きいかな と 思ってた」と 言いつつ 照れ笑い

 いいなあ その顔  父の笑いに そっくりで‥

 

 それから16年過ぎた 夏

 叔父は 離れた都会 アパートの一室で 独り 逝った

 暑い中 最期の言葉は 誰に 語ったのだろうか 父か 母か 

 故郷を離れて70年 街々を 渡り 歩いてきた 叔父 

 最期に 故郷に帰り 今は 兄や父母と一緒に眠る 

 時々 逢いに行き  

 お墓の前で 祖母や父母 叔父さんの 笑い顔を 想い返す

 

 「叔父さんは あのYシャツ まだ 着ているかしら」

 「また 誰かと間違えたりして」

 なんて ひとり笑いしながら‥

 

 

 

 

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