やす君のひとり言

やす君の情景

~大分市竹中やすらぎ霊園~

空のかなたの回顧録

回顧録 no.72 「‥夢の風景  ~幸せである ということ」

「~幸せである ということ」 日当たりのいい部屋 窓ガラスは 咲き揃う春の花を 鮮やかに映し出す 車椅子でうたた寝している 畳敷きのスペースで 体を休めている テーブルの上の白い紙に ちぎった青や赤の色紙を 貼り付けている 向かいは チラシを小さく丸め…

回顧録 no.70 「‥夢の風景 ~ 愛すべき シー」

「~ 愛すべき シー」 「長い間 可愛がってくれて ありがとうございました」 休みの日の朝 庭先で 隣のお兄ちゃんが 頭を下げ 「昨日 シーちゃんが亡くなりました‥」 うつむき加減で 語りかけてくる 「急に元気がなくなって 病院に行ったんですど 腎不全で …

回顧録 no.69 「‥夢の風景  ~肥後の赤椿」

~肥後の赤椿 挨拶に行ったとき 狭い庭には 鉢植えの椿が 幾つも並び そこに 作業服姿の 義父がいた ちょうど 花の時期で 手入れをしていたのだろう 頭を下げると 「‥‥」 小さな声で 応えてくれたのを覚えている 「‥‥」 言葉がなくなって 鉢に目をやると ひ…

回顧録 no.68  「‥夢の風景 ~一心行の大桜 」

「~一心行の大桜」 20年近く前になる その大桜を知ったのは 妻が TV放送か 何かで情報を得たのだろう 「行ってみたい」と 言い出し 思い立って ふたりで訪れた 阿蘇大橋を渡り 南阿蘇村へ入る 左手に阿蘇山を見ながら しばらく走ると 右側に きれいに整備…

回顧録 no.67  「‥夢の風景  ~S先生の鞭 3/3」

「~S先生の鞭 3/3」 それは 「しのぶ竹」 と呼んでいた 小さな竹の 根の部分 節がごつごつして 長さ 40~50㎝ほどあったろうか 振ると 鞭のようにしなり 「ヒュッ」という なんでも 着き通すような 冷たく 恐い 音がした 先生は それで お尻を叩く これま…

回顧録 no.65   「‥夢の風景  ~S先生の鞭  1/3」

「~S先生の鞭 1/3」 校舎の西側 一番端の教室で学んでいた 小学校4年生の時 1年生から3年生までは 同じ女先生が担任 とても優しかった 4年生になり 担任が 男先生に代わった 50歳くらいだったか S先生は 細長い顔 下がり気味の目じり 少し出た顎 よれよれ…

回顧録 no. 62  「‥夢の風景  ~サラのこと」

「~ サラのこと」 サラは 中学生だった娘が妻にねだり はじめて我が家に迎えた 雌の子犬だった コリーを小さくしたシェルティという種類で 名前はペルシャ語の サライ(宿)から いただいた 家族にはとても従順だったが 他の犬との相性はすこぶる悪く 見向…

回顧録 no.61 「‥夢の風景  ~丘の上の天国」 

「~丘の上の天国 」 梅雨前の 晴れた日の朝 友を誘い 丘の上の 喫茶店に足を運ぶ 詰め込み研修会の 裏方 合間の休日 疲れた体と心が 癒しを求めていたから 人のいない 上をめざした 施設探しの時に 偶然見つけた 場所 何もない 青と緑の境 絵に画いたように…

回顧録 no.60 「‥夢の風景  ~何も言えなくて 夏 3/3」

「~何も言えなくて 夏 3/3」 入口から見えない席で グラスは 空いており 赤くした まなざしが 心の中まで 見透かしているかのように 「ひさしぶりね‥ この前はありがとう‥」 出てくる言葉を 探しきれない 「コ-クハイを‥」 少しの沈黙のあと そのひとは 視…

回顧録 no.39  「‥笑うと目のない Hくん」

「‥笑うと目のない Hくん」 会社に入って知ったHくんは 垂れ目で 笑うと目が無くなり 愛嬌あふれる 表情と 優しい心を持ち 誰からも愛されていた めったに怒ることもなかったが 怒っていても 怒っていないような 穏やかな話し方と 柔らかいアクセントの言…

回顧録 no.38 「‥潔かった M先輩  2/2」

「‥潔かった M先輩」 緊急の 全体集会が開かれ 反対派の声が 高まる中 思わず立ち上がり M先輩擁立の正当性を 訴えた 緊張と感情の高まりから 最後は 涙声になっていた 話した内容は 忘れたが 自分なりの正論をぶった 記憶はある まとまらないまま 散会と…

回顧録 no.37 「‥潔かった M先輩 1/2 」

「‥潔かった M先輩」 迷っていた 当時は 20代半ば 先が見えなかった 頑張らねば という気持ちと 職場や上司への不満が交差し もがき あえいでいたような気がする 若かったといえば 若かった 自己主張が強く 通らなければ あからさまに 口に出した 態度も 口…

回顧録 no.36 「‥空に舞った  Nさん」

「‥空に舞った Nさん」 とても前向きで 何事にでも真っ先に手を挙げて 頑張っていたことを 記憶している 青年層の役員を務め 全国誌の特集を組むとき 「やらせてください」 と 自ら 立候補してきた 新しいスポ-ツを取り上げ 自ら やってみるという 企画の …

回顧録 no.35 「‥特急 Aさん」

「‥特急 Aさん」 当時 50代の Aさんは かっこよかった 髪は 短かく 背は 高く 痩せていて いつも 胸を張り 顔を上げ 毅然として 歩く人 だった 朝は 誰より早く 出社し その分 帰りは 一番早く みんなからは 「特急 Aさん」とも 呼ばれていた お酒は ほと…

回顧録 no.34 「‥ 隣国の父 Kさん」

「‥ 隣国の父 Kさん」 Kさんは 隣の国の 企業に勤める 役員で 相互交流で 団長として来日した際 担当になり 1週間ほどお世話したが はじめから おわりまで 見事なまでの 紳士だった 「わたしは あまり飲めませんので お手柔らかにお願いします」 多くの場…

回顧録 no. 33 「‥‥子ども達の星 Sさん 」

「‥‥子ども達の星 Sさん 」 1993年10月末 夜8時過ぎ タイ国 ドンムアン空港 手書きのボ-ドを抱えて 待っている 多くの人の中に Sさんがいた ちょっと見は お坊さん風 頭に髪はなく 丸いメガネをして 身長160ほど 白シャツのサンダル履き 首には 「歓迎 〇…

回顧録 no.32 「‥地域と生きた S先輩」

「‥地域と生きた S先輩」 「 挨拶に行くなら 雨や雪など の 荒れた日が いいと思う そして なるべく 山間部から 行こう 」 地方選挙に 出ることになった S先輩が 発した言葉 挨拶回りに 町内全域を回らなければならないが 広いうえに その町は 山々に挟ま…

回顧録 No31  「‥ もういいね と M先輩」

「‥ もういいね と M先輩」 20代後半の頃 M先輩は50代前半だった 地方議会議員の選挙を通じて 先輩を知った 白髪で 少し小柄で いつも柔和な笑顔を絶やさず 議論を交わしても 怒ることもなく とつとつと 自弁を述べていた みんなからは「仏のMさん」と 尊…

「回顧録 no.30 「‥‥寒い国で出逢った通訳のIさん 5/5」

前回までのお話はこちら↓ yasuragi-reien.hatenablog.jp

回顧録 no.28 「‥‥寒い国で出逢った通訳のIさん 3/5」

「‥‥寒い国で出逢った通訳のIさん 3/5」 いつ飛ぶか 案内もないまま 時は経ち すでに予定より2時間ほど 遅れ 半ば あきらめかけたとき アナウンスが 飛ぶから搭乗を急げ と叫ぶ 依然として 雪が降り続いているのに なんでの 不満と不安が 増幅していく 50…

回顧録no.27 「‥‥寒い国で出逢った通訳のIさん  2/5」

前回までのお話はこちら↓ yasuragi-reien.hatenablog.jp

回顧録 no.26 「‥‥寒い国で出逢った通訳のIさん  1/5」

「‥‥寒い国で出逢った通訳のIさん 1/5」 1989年 11月 初めて訪れた町ワルシャワは 雪が降っていた この時代 東欧はソ連からはじまった民主化の波が押し寄せ ポ-ランドも その流れの中にあり この年の6月には ワレサ議長率いる「連帯」が 国民の圧倒的支援…

回顧録no.25 「‥‥ カレ-うどんと T君一家のこと 3/3」

「‥‥ カレーうどんと T君一家のこと 3/3」 その後 転勤などで疎遠になったが あの雪の年から40数年が経った 秋 急に T君一家に逢いたくて 車を走らせた 記憶だけを頼りに 何度も道に迷いながら 辿り着いた先に 見覚えのある風景が あらわれた だが あれ…

回顧録no.24 「‥‥ カレーうどんと T君一家のこと 2/3」

「‥‥ カレーうどんと T君一家とのこと 2/3」 その冬は 近年にない大雪に見舞われ 設備確認のため 徒歩による巡視指示があり M町から いくつもの山を越えた彼方にある T君の家近くまでが 担当になった 先輩と二人 巡視路に入ったのが 朝の10時頃だったと思…

回顧録no.23 「‥‥ カレ-うどんと T君一家のこと 1/3」 

「‥‥ カレ-うどんと T君一家 のこと 1/3 」 「T君へ お元気でしょうか この頃 時々 あなたたちご家族のことを 思い出します 年を重ねるごとに 冬の雪模様を 見るごとに 若かった頃の 大切な記憶として あの何年間の 綴りが ペ-ジをめくるかのように 少し…

回顧録 no.22 「 ‥‥ 檜よ」

「 ‥‥ 檜よ」 その木は ふるさとの庭に 立っている 魚も棲まない 小さな池の傍に 立っている 幼い頃 山から移した ほんの小さな 檜の苗木 それから 半世紀以上経て はるかな空より 集落を見下ろしている ずっと 見てきた 子供たちが 家を離れていくとき 祖母…

回顧録no.21  「‥‥寡黙な祖父とやさしい祖母のこと」 

「‥‥寡黙な祖父とやさしい祖母のこと」 母の生家は 県境近くの四方を高い山に囲まれた 小さな集落 分家として家を興した祖父は 若いころから必死に働き 祖母と二人で 生計を立て 8人の子供たちを育ててきた 食うや食わずの生活だったかな と 後に母は笑って…

回顧録no. 20 「‥‥ 独りで逝った 君へ」

「‥‥ 独りで逝った 君へ」 君は 生まれた時から体が不自由で 歩くのが精いっぱいだった それでも 明るさは失わず 小さい頃は必死に 後を追って遊んでいた 君が寂しそうな表情を見せるようになったのは 君の弟が 事故で急死してからだと 思う まだ 君の父さん…

回顧録no.19 「‥‥西日を受けて  F先輩」

「‥‥西日を受けて F先輩」 その当時 事務所の周りの建物は低くて 広い空が見えていたから 2階の会議室に も西日が射し 畳は茶色に変わり、窓際の書類は 色褪せていた記憶がある 築何十年になろうかという 古家を改造した木造の事務所は 少し傾いており 入り…

回顧録no.18 「・・・酔うと陽気な? Y先輩」

「‥‥笑うと陽気な? Y先輩」 Y先輩は 飲むと最初は優しく 杯が進むと声や動きが変化し やがては・・・ 蛍光灯が点滅するように 明るさと暗さが同居するようになり 声も 敬語から 少しづつ べらんめぇ調が混じり いつしか 完全に 「おい、おまえ」と なり …