やす君のひとり言

やす君の情景

~大分市竹中やすらぎ霊園~

空のかなたの回顧録

回顧録 no.89 「‥夢の風景 ~夏雲を追う」

「~夏雲を追う」 しんとした 無音の午後 けだるい空気が漂う 夏のある日 地上からの 蒸し返しが ほんの少しだけ和らぐ ブナの木の 足元 眩しげに見上げれば 焼けた緑葉から 差し込んでくる 陽の光 その遥か向こうの 青空に 根づくかのように そびえ立つ 入…

回顧録 no.88 「‥夢の風景 ~花の東京」 5/5

「~花の東京」 5/5 平成4年の年が明けた 早くから相談していた Sさんにだけは 帰る意思を伝えていたが 彼は 反対し続けた 「トップになれ とは言わないが 二度とない機会だし 活かすべきだよ」 近くにあった 老夫婦が営む なじみの居酒屋で 何度か 手を変…

回顧録 no.87 「‥夢の風景 ~花の東京」 4/5

「~花の東京」 4/5 東京在勤 2期目 区切りの4年目に入る 全国規模の行事は 多忙を極め 帯状疱疹を発症し 胃潰瘍を患う など はじめは 不安定だったが やがて ひとつ またひとつと 峠を越えるごとに 心身とも 鍛えられ この頃には 不安より 自信の方が 前を…

回顧録 no.86 「‥夢の風景 ~花の東京」 3/5

「~花の東京」 3/5 気の合う友と 尊敬する先輩に 出会えた幸運 友は 中国地方出身のY君 エネルギッシュな好青年で アウトドア派 休日には 飛びっきり 大きな外車のSUVを駆って 家族総ぐるみ 山に入る 一つ年上だった Y君だが はじめは後輩かな?と 思…

回顧録 no.85  「‥夢の風景 ~花の東京」  2/5

「~花の東京」 2/5 住まいは 板橋区の北だった 事務所まで 電車で約1時間 乗り換えなし それが魅力で 決めた 電車一本で 1時間 は 当時としては 破格の好条件だった と 思う だが その判断は かなり甘く 現実は 違った 始発駅近くには 大きな集合住宅があり…

回顧録 no.84 「‥夢の風景 ~花の東京 」  1/5

「~花の東京」 1/5 初冬の 日曜日の午後 薄曇りの空の下 百貨店の屋上 ざわめきの中から 離れ ひとり 端のベンチで 時間を持て余している 妻と子供たちは 買い物に夢中で おそらく ここにいることすら 忘れて いるのだろう そんな 嫌味のひとつも 呟きたい…

回顧録 no.83 「‥夢の風景 ~辛い時があればこそ」

「~辛い時があればこそ」 生きてきた道程で ひとつ 後悔を上げるとすれば ある戦いに挑んで 負けた あのとき 乞われて 決意し 1年以上の時間と 力を 費やして 戦った記憶 そして 負けて 初めて 分かったことがある 真実に見えていたことが 真実ではなかった…

回顧録 no.82  「‥夢の風景 ~沈橋の話」

「~沈橋の話」 長さ40mほど 一級河川に設置された コンクリ-ト製の その橋は 沈橋(ちんきょう)と呼ばれて 地域の暮らしには 欠かせなかったし 通勤や仕事でも 重宝されており 渋滞とまでは いかないが 時間帯によっては どちらか一方の車が 岸で待機する…

回顧録 no.80 「‥夢の風景 ~Mさん と ホタル」

「‥Mさん と ホタル」 20の頃 住んでいた町には 澄んだ水を湛えた川が 蛇行しながら 横断しており 車で20~30分ほど走った その川の上流に 石灰石の白と清水が 織りなす 美しい渓谷があって 夏には 多くの家族の にぎわいがあった 渓谷のすぐ先 古い石橋が…

回顧録 no.78  「‥夢の風景 ~この世とあの世」

「~この世とあの世」 緩やかな坂道が続き 陽炎のように揺れた 遥かな先に 海が見える 春から夏に移る 晴れた 風のある 昼下がり 家庭訪問を終えて その風に 押されるかのように 坂道を下っていく 人影はまばらで そして なぜだか 誰もが 海をめざしている …

回顧録 no.77  「‥夢の風景 ~鐘の音が単調に鳴り響く」

「~鐘の音が単調に鳴り響く」 20にならない 冬だったと 思う 何気なく聞いている FMから流れた ロシア民謡 その曲名が 「鐘の音が単協に鳴り響く」 だと 後で知った フランツ・レフラ-という ドイツのギター奏者が奏でる音は あの頃 あの町で 青春の持っ…

回顧録 no.75  「‥夢の風景 ~祝婚の歌」

「~祝婚の歌」 「結婚して よかったですか?」 と 問われれば 「よかった」 と 答えるに 決まっている いつも 仲が良かったわけではない 幾度となく 喧嘩も した それでも 思い出すのは 楽しそうにお喋りしているとき 桜花を見上げ微笑んでいるとき 庭先で…

回顧録 no.73 「 ‥夢の風景  ~青春の詩 」

「 ~青春の詩 」 人生の折り返し点を 遥かに過ぎた 今 「青春」という 言葉が 蘇っている 機関紙担当になった 30代後半 初めて 新年号表紙を 任された まず 写真‥ 水平線から昇る朝陽 離陸せんとする飛行機 朝靄にけむる鉄塔群 何日も 県内を走り回ったが …

回顧録 no.72 「‥夢の風景  ~幸せである ということ」

「~幸せである ということ」 日当たりのいい部屋 窓ガラスは 咲き揃う春の花を 鮮やかに映し出す 車椅子でうたた寝している 畳敷きのスペースで 体を休めている テーブルの上の白い紙に ちぎった青や赤の色紙を 貼り付けている 向かいは チラシを小さく丸め…

回顧録 no.70 「‥夢の風景 ~ 愛すべき シー」

「~ 愛すべき シー」 「長い間 可愛がってくれて ありがとうございました」 休みの日の朝 庭先で 隣のお兄ちゃんが 頭を下げ 「昨日 シーちゃんが亡くなりました‥」 うつむき加減で 語りかけてくる 「急に元気がなくなって 病院に行ったんですど 腎不全で …

回顧録 no.69 「‥夢の風景  ~肥後の赤椿」

~肥後の赤椿 挨拶に行ったとき 狭い庭には 鉢植えの椿が 幾つも並び そこに 作業服姿の 義父がいた ちょうど 花の時期で 手入れをしていたのだろう 頭を下げると 「‥‥」 小さな声で 応えてくれたのを覚えている 「‥‥」 言葉がなくなって 鉢に目をやると ひ…

回顧録 no.68  「‥夢の風景 ~一心行の大桜 」

「~一心行の大桜」 20年近く前になる その大桜を知ったのは 妻が TV放送か 何かで情報を得たのだろう 「行ってみたい」と 言い出し 思い立って ふたりで訪れた 阿蘇大橋を渡り 南阿蘇村へ入る 左手に阿蘇山を見ながら しばらく走ると 右側に きれいに整備…

回顧録 no.67  「‥夢の風景  ~S先生の鞭 3/3」

「~S先生の鞭 3/3」 それは 「しのぶ竹」 と呼んでいた 小さな竹の 根の部分 節がごつごつして 長さ 40~50㎝ほどあったろうか 振ると 鞭のようにしなり 「ヒュッ」という なんでも 着き通すような 冷たく 恐い 音がした 先生は それで お尻を叩く これま…

回顧録 no.65   「‥夢の風景  ~S先生の鞭  1/3」

「~S先生の鞭 1/3」 校舎の西側 一番端の教室で学んでいた 小学校4年生の時 1年生から3年生までは 同じ女先生が担任 とても優しかった 4年生になり 担任が 男先生に代わった 50歳くらいだったか S先生は 細長い顔 下がり気味の目じり 少し出た顎 よれよれ…

回顧録 no. 62  「‥夢の風景  ~サラのこと」

「~ サラのこと」 サラは 中学生だった娘が妻にねだり はじめて我が家に迎えた 雌の子犬だった コリーを小さくしたシェルティという種類で 名前はペルシャ語の サライ(宿)から いただいた 家族にはとても従順だったが 他の犬との相性はすこぶる悪く 見向…

回顧録 no.61 「‥夢の風景  ~丘の上の天国」 

「~丘の上の天国 」 梅雨前の 晴れた日の朝 友を誘い 丘の上の 喫茶店に足を運ぶ 詰め込み研修会の 裏方 合間の休日 疲れた体と心が 癒しを求めていたから 人のいない 上をめざした 施設探しの時に 偶然見つけた 場所 何もない 青と緑の境 絵に画いたように…

回顧録 no.60 「‥夢の風景  ~何も言えなくて 夏 3/3」

「~何も言えなくて 夏 3/3」 入口から見えない席で グラスは 空いており 赤くした まなざしが 心の中まで 見透かしているかのように 「ひさしぶりね‥ この前はありがとう‥」 出てくる言葉を 探しきれない 「コ-クハイを‥」 少しの沈黙のあと そのひとは 視…

回顧録 no.39  「‥笑うと目のない Hくん」

「‥笑うと目のない Hくん」 会社に入って知ったHくんは 垂れ目で 笑うと目が無くなり 愛嬌あふれる 表情と 優しい心を持ち 誰からも愛されていた めったに怒ることもなかったが 怒っていても 怒っていないような 穏やかな話し方と 柔らかいアクセントの言…

回顧録 no.38 「‥潔かった M先輩  2/2」

「‥潔かった M先輩」 緊急の 全体集会が開かれ 反対派の声が 高まる中 思わず立ち上がり M先輩擁立の正当性を 訴えた 緊張と感情の高まりから 最後は 涙声になっていた 話した内容は 忘れたが 自分なりの正論をぶった 記憶はある まとまらないまま 散会と…

回顧録 no.37 「‥潔かった M先輩 1/2 」

「‥潔かった M先輩」 迷っていた 当時は 20代半ば 先が見えなかった 頑張らねば という気持ちと 職場や上司への不満が交差し もがき あえいでいたような気がする 若かったといえば 若かった 自己主張が強く 通らなければ あからさまに 口に出した 態度も 口…

回顧録 no.36 「‥空に舞った  Nさん」

「‥空に舞った Nさん」 とても前向きで 何事にでも真っ先に手を挙げて 頑張っていたことを 記憶している 青年層の役員を務め 全国誌の特集を組むとき 「やらせてください」 と 自ら 立候補してきた 新しいスポ-ツを取り上げ 自ら やってみるという 企画の …

回顧録 no.35 「‥特急 Aさん」

「‥特急 Aさん」 当時 50代の Aさんは かっこよかった 髪は 短かく 背は 高く 痩せていて いつも 胸を張り 顔を上げ 毅然として 歩く人 だった 朝は 誰より早く 出社し その分 帰りは 一番早く みんなからは 「特急 Aさん」とも 呼ばれていた お酒は ほと…

回顧録 no.34 「‥ 隣国の父 Kさん」

「‥ 隣国の父 Kさん」 Kさんは 隣の国の 企業に勤める 役員で 相互交流で 団長として来日した際 担当になり 1週間ほどお世話したが はじめから おわりまで 見事なまでの 紳士だった 「わたしは あまり飲めませんので お手柔らかにお願いします」 多くの場…

回顧録 no. 33 「‥‥子ども達の星 Sさん 」

「‥‥子ども達の星 Sさん 」 1993年10月末 夜8時過ぎ タイ国 ドンムアン空港 手書きのボ-ドを抱えて 待っている 多くの人の中に Sさんがいた ちょっと見は お坊さん風 頭に髪はなく 丸いメガネをして 身長160ほど 白シャツのサンダル履き 首には 「歓迎 〇…

回顧録 no.32 「‥地域と生きた S先輩」

「‥地域と生きた S先輩」 「 挨拶に行くなら 雨や雪など の 荒れた日が いいと思う そして なるべく 山間部から 行こう 」 地方選挙に 出ることになった S先輩が 発した言葉 挨拶回りに 町内全域を回らなければならないが 広いうえに その町は 山々に挟ま…